雪が降る町

UNICORN - 雪が降る町

「雪が降る町」は、1992年12月2日にリリースされたUNICORNの8枚目のシングル。作詞・作曲は奥田民生、プロデュースはUNICORN名義。

UNICORN第一期晩年の名作とされ、奥田民生と井上陽水のコラボレーションのきっかけとなった楽曲として知られています。

概要

前作「ヒゲとボイン」から約1年ぶりのシングル。アルバム『SPRINGMAN』（1993年）には未収録。当初はクリスマスソングとして企画されましたが、奥田民生のアイデアで年末をテーマにした楽曲に変更。多くのクリスマスソングとの差別化を図り、年末の東京の情景を切り取った珍しい"年末ソング"として制作されました。

GLAYのTAKUROも、日本の年末を歌うという点に驚き、GLAYのアルバムに収録された「Back Home With Mrs.Snowman」は本作に影響を受けて制作されたとのこと。楽曲はシャッフルビートを基調とし、中期ビートルズからの影響が色濃く反映されています。

オリコンチャートでは最高4位を記録。後に鈴の音色を加えた「雪が降る町 "more bell mix"」（1996年）もリリースされ、ウィンターソングの代表曲の一つとなっています。本作をきっかけに奥田民生と井上陽水の交流が始まり、PUFFYや安藤裕子、アイドルネッサンスなど、多くのアーティストによってカバーされています。

背景

UNICORNのメンバーがソロ活動を行った後、久しぶりのバンドとしてのシングルとしてリリース。奥田民生は「5人で演奏することを意識して作った」と語っています。クリスマスソングが注目されていた当時、「UNICORNもクリスマスソングを!」というコンセプトで制作が開始されましたが、奥田民生の「年末ソングの方が大晦日まで流せる」という発想からコンセプトが変更されました。

メンバーそれぞれが楽曲を持ち寄った際、シングル向きの曲がなかったため、一時リリース中止案が出ましたが、堀内一史が本作を評価したことでリリースが決定。西川幸一は、本作が1年の締めくくりにふさわしいという奥田民生の意見があったことを明かしています。奥田民生は、メンバーの楽曲の中で本作が最も年末のイメージに合致していると考え、リリースには理由が必要だったため、冬をイメージさせる本作を選定したと述べています。

録音、制作

本作はコンサートツアー「UNICORN TOUR 1992 "S.F.W"」で初披露。レコーディングはライブ時とほぼ同じアレンジで進められました。阿部義晴は、リリース前に楽曲がライブで披露されるのは珍しいと述べています。手島いさむは「レコーディング前に歌詞があること自体すごい」とコメント。しかし、楽曲のテンポからレコーディングは難航。堀内一史はベースを交換するのを忘れて最後まで演奏していたそうです。

イントロやコーラスも試行錯誤が繰り返され、堀内一史による甲高い声の挿入や、全員でのコーラスも試みられましたが、最終的には断念。叫び声をレコーディングするに至った際、スタッフからは呆れられたそうです。

カップリング曲「お年玉」は、本作が年末をテーマにした楽曲だったため、「2曲目は正月の歌だ」という発想から阿部義晴が制作。歌詞は阿部義晴と西川幸一が神戸のホテル滞在中に制作し、他のメンバーは飲み会に出かけました。「お年玉」には、シンクラヴィアやアコーディオン、カシオトーン、バンジョー、スライドギターなど、様々な楽器が使用されています。

音楽性

音楽誌『別冊宝島724 音楽誌が書かないJポップ批評22 ユニコーン&奥田民生の摩訶不思議（ロック・マジック）』において、榊ひろとは、本作がソロ活動期間を経てリリースされたことから「新作レコーディングの予告」と指摘。また、音楽性について「弾むようなシャッフル系のビートとキラキラした上モノのサウンド」と評し、ベースラインや管楽器のフレーズに中期ビートルズの影響が見られると述べています。解散1年前の作品でありながら「すでに一抹の終末感が漂う」とも指摘しています。

内田和世は、カップリング曲「お年玉」について、「正面きって“お正月ソング”を歌うロックバンドもなかなかいないだろう」とコメントしています。

リリースとチャート成績

1992年12月2日に8センチCDでリリース。売り上げが伸び悩んだため、奥田民生は鈴の音色を追加した「雪が降る町 "more bell mix"」を1996年11月1日に再リリース。「雪が降る町 "more bell mix"」はオリジナルバージョンより再生時間が15秒短くなっています。

オリコンチャートでは、「雪が降る町」は最高4位、23.6万枚を売り上げ、「雪が降る町 "more bell mix"」は最高38位、2.2万枚を売り上げました。

影響

井上陽水の息子が本作を愛聴していたことがきっかけで、井上陽水が奥田民生に手紙を送りました。この交流から、小泉今日子の「月ひとしずく」やPUFFYの「アジアの純真」などの共作を経て、井上陽水奥田民生が結成されました。

ミュージック・ビデオ

スタジオでの演奏シーン、街並みの早回し映像、コンサートツアー「UNICORN TOUR 1992 "S.F.W"」のオフショットで構成。監督は大沢伸一。

ライブ・パフォーマンス

リリース前のコンサートツアー「UNICORN TOUR 1992 "S.F.W"」で初披露。アンコールの最後に演奏され、「今日はじめて人前でやる新曲です」というMCの後に演奏。奥田民生の足元には「新曲」とだけ書かれたセットリストが貼られていました。

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