雪子さんの足音

雪子さんの足音

『雪子さんの足音』（ゆきこさんのあしおと）は、日本の作家、木村紅美が手がけた小説作品、およびそれを原作として制作された同名の映画です。人間の孤独や繋がり、そして失われゆく日常を描写した物語として知られています。

小説

小説版『雪子さんの足音』は、文芸誌『群像』の2017年9月号に初めて掲載され、その後、2018年2月1日には講談社から単行本として刊行されました。刊行後、本作は第158回芥川賞および第40回野間文芸新人賞にノミネートされるなど、文学界でも注目を集めました。

物語の舞台は、東京・高円寺にある築年数の経ったアパート「月光荘」です。家賃わずか5万円というこのアパートには、様々な事情を抱えた人々が暮らしています。物語は、アパートの大家である川島雪子と、そこに住む下宿人たちの交流やそれぞれの人生模様を中心に展開します。穏やかな日常が描かれる中で、雪子が熱中症により誰にも気づかれずに孤独死してしまうという出来事が、物語の鍵となり、登場人物たちの心に波紋を広げていきます。古いアパートという空間が、現代社会における人間関係の希薄さや、それでも存在する微かな繋がりを浮かび上がらせる装置として機能しています。

主な登場人物

物語に登場する主要な人物たちです（括弧内は映画でのキャスト）。

川島雪子（吉行和子）：月光荘の大家。熱中症で孤独死。
小野田香織（菜葉菜）：月光荘の下宿人。
湯佐 薫（寛一郎）：月光荘の下宿人。
高梨秋江（大方斐紗子）：喫茶店の店主。
川島良雄（野村万蔵）：雪子の息子。
湯佐節子（山崎ハコ）：薫の母親。

その他にも、住人やその関係者など、様々な人物が登場し、物語を彩ります。

映画

小説は高い評価を受け、2019年には映画化されました。本作は、映画監督である浜野佐知が主宰する製作会社「株式会社旦々舎」などが制作を手がけました。浜野佐知が監督を務め、脚本は山﨑邦紀が担当しています。音楽は吉岡しげ美が手がけ、物語の雰囲気を作り上げています。映画では、小説の世界観を映像化し、大家・雪子と住人たちの人間模様を丁寧に描き出しています。特に、大家である雪子を演じた吉行和子の演技は高い評価を得ました。

スタッフ

映画制作に関わった主なスタッフは以下の通りです。

監督：浜野佐知
脚本：山﨑邦紀
音楽：吉岡しげ美
撮影：小山田勝治
照明：守利賢一
美術：山崎 輝
録音：藤林 繁
編集：金子尚樹
制作：森満康己
助監督：湯本信一
ヘアメイク：清水惇子
衣裳：青木 茂
CG：川村翔太

ロケ地

映画の撮影は静岡県静岡市を中心に行われました。作中に登場する様々な場所は、市内の実在する建物を活用して撮影されています。

月光荘：旧エンバーソン邸（静岡市駿河区池田）
喫茶店：レザン（静岡市葵区常磐町）
うなぎ屋：石橋（静岡市駿河区西中原）
商店街：清水駅前銀座商店街（静岡市清水区真砂町）
郵便局：静岡中央郵便局（静岡市葵区黒金町）
電車：静岡鉄道静岡清水線
駅：静岡鉄道 新静岡駅

これらのロケ地は、作品の世界観をより深く表現する上で重要な役割を果たしています。

『雪子さんの足音』は、小説としても映画としても、現代社会における孤独や人間関係の機微を描いた作品として、多くの観客や読者に共感と感動を与えました。古いアパートという閉鎖的な空間だからこそ浮かび上がる、ささやかな人々の繋がりが心に響く物語です。

外部リンク

映画『雪子さんの足音』公式サイト)
株式会社旦々舎 映画『雪子さんの足音』紹介ページ)

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