雪楼集

『雪楼集』は、14世紀に成立した元代の文人、程鉅夫（てい・きょふ、1249年-1318年）による文集です。書名は、程鉅夫が自らを雪楼と号したことに由来します。

程鉅夫の生涯

程鉅夫は、建昌軍南城県（現在の江西省撫州市南城県）の出身です。彼の叔父である知建昌軍の程飛卿がモンゴル軍に降伏したことがきっかけで、程鉅夫自身もモンゴル帝国（大元ウルス）に仕えることになりました。本名は文海でしたが、武宗クルク・カアンが即位した後、カアンの本名である「カイシャン」の漢字表記「海山」を避諱（忌避）して、字である「鉅夫」で知られるようになりました。程鉅夫は、元朝において重要な地位を歴任し、文化の発展に貢献しました。

『雪楼集』の成立と変遷

程鉅夫の死後、彼の文集は息子の程大本によって編集されました。その後、程鉅夫の門人であった掲傒斯（けい・けいし）が校正を行い、45巻本として完成したとされています。元末の1358年（至正18年）には、掲傒斯の子である掲汯（けい・こう）と程鉅夫の孫である程世京によって重訂が行われ、30巻本のうち10巻（玉堂類藁9巻、奏議1巻）がまず刊行されました。しかし、元末明初の混乱の中で版木が消失してしまいます。

1396年（洪武29年）には、先に刊行された10巻本と残りの写本（巻11から25までが文、巻26から30までが詩・楽府）をまとめ直した30巻本が刊行されました。この30巻本が、後世に伝わる『雪楼集』の基本形となりました。

近代の再刊

これ以後、『雪楼集』の刊刻は途絶えていましたが、1910年（宣統2年）に陽湖の陶湘（とう・しょう）が洪武刊本を用いて再刊しました。さらに1925年には、『楚国文憲公雪楼程先生文集』として公開されました。この陶湘による刊本が、『元代珍本文集彙刊』に影印として収録され、現在でも研究者や愛好家の間で広く用いられています。

『雪楼集』の内容

『雪楼集』には、程鉅夫が著した詩文や奏議などが収録されています。彼の文章は、元代の社会や文化、政治情勢を反映しており、当時の知識人の思想や生活を知る上で貴重な資料となっています。特に、政治に関する意見や提言をまとめた奏議は、元朝の統治機構や政策について理解を深める上で重要な情報源です。また、程鉅夫の詩は、自然や人生をテーマにしたものが多く、彼の豊かな感性と教養がうかがえます。

まとめ

『雪楼集』は、程鉅夫の思想や才能を知ることができるだけでなく、元代の文化や社会を理解するための重要な手がかりとなります。文集の成立過程や再刊の歴史を辿ることで、当時の出版事情や文化に対する関心の高さも垣間見ることができます。現在でも研究に用いられており、元代史研究には欠かせない文献です。

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