雪花の虎

雪花の虎

『雪花の虎』は、東村アキコが描く歴史漫画で、戦国時代の武将・上杉謙信が実は女性だったという大胆な設定が特徴です。作者初の歴史漫画でありながら、史実に基づいた詳細な描写と、作者ならではのユーモアが織り交ぜられています。

あらすじ

物語は、越後国守護代・長尾為景の第三子として生まれた虎千代（後の上杉謙信）の誕生から、第四次川中島の戦いまでを描いています。虎千代は、生まれる前に毘沙門天が母の夢に現れ、その子を託されたという予言を受けていました。しかし、生まれたのは女児であったため、父・為景は一度は落胆するものの、姫武将として育てることを決意します。虎千代は、幼少の頃から武芸と学問に励み、やがて元服して「景虎」と名乗るようになります。

景虎は、その武勇と知略によって、数々の戦で活躍し、長尾家の当主となっていきます。しかし、その性別は周囲には秘密にされており、「女の噂もある」程度にしか認識されていません。物語は、景虎が自身の性別を隠しながらも、戦国武将として成長していく姿と、彼女を取り巻く人間関係、そして、ライバルである武田信玄との宿命的な対決を描いています。

主な登場人物

虎千代 → 景虎 → 上杉政虎：本作の主人公。長尾家の次女で、後に上杉謙信となる。武芸に秀で、知略にも長けている。周囲には隠しているが、実は女性。生理痛に悩む場面も描かれる。物語中盤で、進士源十郎との間に子を宿すが、流産してしまう。
長尾為景：景虎の父で、越後国守護代。猛将として知られる。娘である虎千代を姫武将として育てることを決意する。
長尾晴景：景虎の兄で、長尾家の嫡男。病弱で、戦よりも鼓を好む。景虎の才能を認めつつも、複雑な感情を抱いている。
紺：景虎の母。娘を男として育てるという夫の方針に驚愕する。
綾：景虎の姉で、上田長尾家に嫁ぐ。
本庄実乃：栃尾城城主。景虎の男らしさに惚れ込み、彼女を城に迎える。
黒田秀忠：長尾家の老臣。晴景を見限り、反乱を起こすが、景虎に鎮圧される。
小島弥太郎：元山賊で、景虎の用心棒。景虎を「虎様」と慕う。
宇佐美定満：景虎の軍師。
斎藤朝信：赤田城城主。
シロ：景虎の影武者。後に「甘粕白太郎長重」の名を与えられる。
麦：シロの妹。家事全般に長けている。
武田晴信（後の信玄）：甲斐国の武将で、景虎の宿敵。山中の隠し湯で出会った女性（景虎）に心惹かれる。
山本勘助：武田家の軍師。
足利義藤（後の義輝）：室町幕府十三代将軍。剣豪でもある。
進士源十郎藤延：義藤の側近で、後に明智光秀となる。景虎と恋仲になるが、三好勢の暗殺者の毒刃から景虎をかばい負傷。二人は高野山へ逃れ、その地で子をなす。

作品の特徴

『雪花の虎』は、史実をベースにしながらも、作者独自の解釈と大胆な設定が魅力の作品です。特に、上杉謙信を女性として描くという斬新なアイデアは、多くの読者に衝撃を与えました。また、戦国時代の武将たちの人間ドラマを、作者ならではのユーモラスなタッチで描いている点も、本作の大きな魅力です。歴史漫画でありながら、女性読者にも親しみやすい作風であり、多くのファンを獲得しています。

また、作中には、歴史が苦手な読者向けに「アキコのティータイム」という解説コーナーが設けられており、歴史背景や人物像を分かりやすく説明しています。このコーナーでは、作者の雑談や近況も語られており、読者との距離感を縮める工夫が凝らされています。

連載情報

本作は、当初『ヒバナ』（小学館）で連載されていましたが、同誌の休刊に伴い、『ビッグコミックスピリッツ』に移籍しました。連載期間は2015年から2020年までと長期にわたり、多くの読者に支持されました。

書誌情報

単行本は、小学館より「ビッグコミックススペシャル」として全10巻が刊行されています。

『雪花の虎』は、歴史ファンはもちろん、漫画好き、そして歴史に興味がない人でも楽しめる作品です。戦国時代の武将たちの熱い生き様と、作者の独特な世界観をぜひ堪能してください。

もう一度検索