雲の影

ピンク・フロイド『雲の影』

『雲の影』（Obscured by Clouds）は、1972年にピンク・フロイドが発表したアルバムです。このアルバムは、バーベット・シュローダー監督の映画『ラ・ヴァレ』のサウンドトラックとして制作されました。

概要

本作は、1969年の映画『モア』以来となる、ピンク・フロイドによるサウンドトラックアルバムです。制作当時、バンドはアルバム『狂気』のレコーディング中でしたが、中断してフランスのパリ郊外で約2週間でレコーディングが行われました。

ロジャー・ウォーターズが単独で手掛けた「フリー・フォア」は、一聴するとユーモラスな曲ですが、彼の父親の戦死がさりげなく触れられています。この曲には、後の『ザ・ウォール』や『ファイナル・カット』へと繋がるテーマの萌芽が見られます。また、歌詞のある楽曲である「ウォッツ」や「ステイ」では、ウォーターズにしては珍しく、率直で素朴な感情が表現されています。

「大人への躍動」は、デヴィッド・ギルモアが作詞作曲を手掛けたロックナンバーです。ギルモアは、1987年に『鬱』を発表するまで、バンド内では作詞を行いませんでした。

収録曲

アナログA面

1. 雲の影 - Obscured By Clouds
2. ホエン・ユーアー・イン - When You're In
3. 炎の橋 - Burning Bridges
4. ザ・ゴールド・イッツ・イン・ザ… - The Gold It's In The...
5. ウォッツ - Wot's... Uh The Deal
6. 泥まみれの男 - Mudmen

アナログB面

1. 大人への躍動 - Childhood's End
2. フリー・フォア - Free Four
3. ステイ - Stay
4. アブソルートリー・カーテンズ - Absolutely Curtains

カバーアート

アルバムのカバーデザインはヒプノシスが担当しました。映画のスチール写真を使用するという決定のもと、彼らは多くの写真を見直しました。最終的に、ピントがぼけていたプロジェクターで映写したスライドに目が留まり、それを採用しました。その写真は、「木に登った男性が何かを取ろうと手を伸ばしている」様子を捉えたもので、葉の隙間から差し込む光がピンボケによって丸く映り、幻想的なイメージを創り出しています。

『雲の影』は、サウンドトラックとしての側面を持ちながらも、ピンク・フロイドの音楽的な探求心と、後の作品に繋がる要素が詰まったアルバムと言えるでしょう。

もう一度検索