雲の階段

雲の階段

『雲の階段』（くものかいだん）は、著者渡辺淳一による日本の小説で、過疎の美琴島を舞台にした医療と愛の葛藤を描いています。この物語は主に医師不足にあえぐ診療所の事務員・三郎が中心となり、彼の周囲で展開される複雑な人間関係を描写しています。

あらすじ

美琴島には診療所が存在していましたが、医師の数が不足している深刻な状況に置かれていました。事務員の三郎は無免許ながら、診療所の医師に代わって医療行為を行う日々を送りますが、そのことを苦々しく思う看護師長や事務長に見守られています。彼を唯一支える存在は、看護師の明子で彼女は三郎の行動に理解を示す唯一の人でした。

ある日、東京の大病院の院長令嬢である亜希子が美琴島に急患として運ばれます。病状は子宮外妊娠で急を要する状態でしたが、事情により医師が不在で、三郎が緊急手術を行うことになります。手術は成功し、亜希子は無事に回復しました。この出来事をきっかけに、三郎は彼女に好意を抱き始め、亜希子も三郎に惹かれていきます。

その後、亜希子から「手術痕を治して欲しい」という依頼を受け、再度彼女の前に現れた三郎は、メスを握ることとなります。二人の関係は次第に深まり、三郎を巡る明子と亜希子の間に複雑な三角関係が生まれます。このような状況の中、三郎は自身の医療行為が無資格であることに悩みつつも、医師として成長していく姿が描かれています。

書誌情報

本作は、1978年から1979年まで週刊誌「週刊現代」で連載が行われ、1982年には講談社から単行本が出版されました。その後、1985年に文庫本として再出版され、さらに2013年に新装版も登場しました。様々な形で多くの読者に愛されてきました。

テレビドラマ化

この小説は、ドラマとしても二度映像化されています。1983年版では、小野寺昭が三郎役を演じ、物語はテレビ朝日系列で放送されました。また、2013年版では長谷川博己が主演し、日本テレビ系列で放送され、この作品の舞台やキャストは新たに一新されました。特に2013年版は原作者の渡辺淳一の生前最後の映像化作品とされ、注目を浴びました。

終わりに

『雲の階段』は、医療の枠を超えた人間の深い愛情や苦悩を描いた作品であり、登場人物たちの選択がどのように彼らの運命を変えていくのかを見守ることができます。この物語は、ただの恋愛小説に留まらず、倫理や人間の本質について考えさせられる内容となっています。

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