雲巌禅寺

雲巌禅寺（うんがんぜんじ）

熊本県熊本市西区松尾町平山にある曹洞宗の寺院で、山号は宝華山または岩殿山と称します。通称として「岩戸観音」の名で広く親しまれています。この通称は、境内の奥にある霊巌洞に安置されている、石造りの四面馬頭観音像に由来します。

歴史

雲巌禅寺は、南北朝時代に中国（元の時代）から渡来した禅僧、東陵永璵（とうりょうえいよ）禅師によって建立されたと伝えられています。本尊である馬頭観音像は、寺の建立以前から霊巌洞に祀られていたとされ、世阿弥の謡曲「檜垣」にも登場します。この謡曲では、平安時代の歌人・檜垣がこの観音像を日参したという故事が語られています。

特に著名な出来事として、剣聖・宮本武蔵が晩年、この霊巌洞に参籠し、二天一流の奥義を記した兵法書「五輪書」を著したことが挙げられます。武蔵がこの地で思索を深め、独自の武道哲学を確立したことは、多くの人々に感銘を与えています。

境内と周辺

雲巌禅寺は金峰山の西麓に位置し、その境内は1975年に熊本県指定史跡名勝に指定されています。境内裏山には、江戸時代中期に作られたとされる十六羅漢や五百羅漢の石像群が並び、訪れる人々に静寂な雰囲気を提供しています。

寺に隣接する宝物館には、宮本武蔵が巌流島の決闘で使用したとされる木剣や、武蔵の自画像などが収蔵されており、武蔵ファンにとっては必見の場所となっています。また、寺の周辺は奇岩や紅葉の名所として知られ、「肥後耶馬渓」とも呼ばれています。この一帯は「岩戸の里公園」として整備されており、園内にある黒岩展望台からは有明海を挟んで雲仙普賢岳を望むことができます。

文化財

雲巌禅寺には、以下の重要文化財（国指定）があります。

木造東陵永璵禅師倚像：南北朝時代に作られた禅師の像で、現在は熊本市立博物館に寄託されています。

行事

雲巌禅寺では、以下の年間行事が執り行われています。

3月18日：春季大祭
9月28日：不動尊大祭
10月18日：秋季大祭

御詠歌

雲巌禅寺には、以下の御詠歌が伝わっています。

ふたらくの都にかよふ道芝の 露おきそむる此ほらの中
わしのやまその春秋は程ふれと みのりのはなはなおにおいけり

所在地

熊本県熊本市西区松尾町平山589

交通

バス：熊本桜町バスターミナルから産交バス（芳野経由河内温泉行き）に乗車し、「岩戸観音入口」バス停で下車後、徒歩約18分（1.4km）。
自動車：九州自動車道熊本インターチェンジから約21km。

関連情報

蓮台寺 (熊本市)：檜垣が草庵を結んだ地とされ、ここから岩戸観音へ通ったと伝えられています。

外部リンク

雲巌禅寺 -【満遊!くまもと】



雲巌禅寺は、その歴史的背景、美しい自然、そして宮本武蔵ゆかりの地として、多くの人々を魅了し続けています。訪れる際には、静寂な境内で歴史と文化に触れ、心静かに過ごすことができるでしょう。

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