電気メス

電気メス：外科手術における精密な切開と止血

電気メスは、外科手術において組織の切開や止血を行うために広く用いられている電子医療機器です。高周波電流を利用したその作用機序は、細胞の急激な加熱と蒸散による切開、タンパク質の凝固による止血という、二つの主要な機能を備えています。現在では、多くの手術室で不可欠なツールとして認識されています。

電気メスの種類と機能

電気メスは大きく分けて、モノポーラー型、バイポーラー型、ボールチップ型の3種類があります。

1. モノポーラー型

最も一般的なタイプで、医師が持つ電極と、患者に装着する対極板、高周波発生装置の3つの部品から構成されます。電流は対極板を通じて人体に流れ、電極の先端で組織を切開・凝固します。

2. バイポーラー型

ピンセット状の電極を持つタイプで、電流は電極の先端間のみを流れます。そのため、他の部位への漏電リスクが低く、心臓ペースメーカーを埋め込んでいる患者や神経が密集した部位の手術に適しています。主に凝固作用に使用されます。

3. ボールチップ型

腹膜偽粘液腫の手術などで用いられる特殊なタイプです。この病気では、腹腔内に粘液が大量に溜まり、臓器に癒着した偽粘液腫を剥離する必要があります。ボールチップ型電気メスは、組織へのダメージを最小限に抑えながら、偽粘液腫を丁寧に剥離できるという利点があります。

電気メスの利点と欠点

電気メスは、広範囲な臨床適用、容易な操作性、優れた止血能力、高い費用対効果といった多くの利点があります。しかしながら、心電図へのノイズ干渉、ペースメーカーへの影響、火傷リスク、誤動作の可能性など、使用に際して注意すべき欠点も存在します。局所麻酔下での手術では、患者が電気刺激による痛みや筋肉の不随意運動を感じる可能性も指摘されています。

電気メスの動作モード

電気メスは、主に「切開モード」と「凝固モード」の2つの動作モードを持ちます。

切開モード

組織の水分を急速に蒸発させることで切開を行います。一般的に黄色のボタンで操作されます。

凝固モード

組織を熱変成させることで止血を行います。青色のボタンで操作されるのが一般的です。このモードには、広範囲の止血を行うスプレー凝固モードも含まれます。

電気メスの歴史と発展

日本では、1935年に中田瑞穂医師が脳腫瘍手術で初めて電気メスを使用しました。これは、アメリカ留学中にハーヴェイ・ウィリアムズ・クッシング教授の手術を視察し、感銘を受けて導入したものです。その後、電気メスは日本の外科手術において広く普及し、現在では手術に欠かせない重要な医療機器となっています。

まとめ

電気メスは、その優れた切開と止血能力から、現代の外科手術において不可欠なツールとなっています。しかし、その使用には注意が必要であり、医師は熟練した技術と安全管理の下で使用することが求められます。今後の技術革新により、さらに安全で効率的な電気メスが開発されることが期待されます。

もう一度検索