電気炉メーカー

電気炉メーカーとは

電気炉メーカーとは、鉄スクラップを主原料として電気炉を用いて鉄鋼を生産するメーカーのことです。主に棒鋼、形鋼、平鋼、鋼板などの普通鋼を生産しています。特殊鋼メーカーや鋳鍛鋼メーカーとは区別されます。電気炉は「電炉」と略されることもあり、電気炉メーカーは電炉メーカーとも呼ばれます。

概要

高炉が鉄鉱石と原料炭を主原料とするのに対し、電気炉は鉄スクラップを主原料とします。2001年から2006年の日本における粗鋼生産比率は、高炉が73%、電気炉が27%でした。現在、日本の電気炉メーカーは約60社存在します。

鉄鋼の製造工程（鋳造、圧延）は高炉と電気炉であまり変わりませんが、鉄スクラップには不純物が含まれているため、電気炉製の鉄鋼は加工性で劣るとされてきました。しかし近年では、その不純物を有効利用して高級鋼板を製造する技術も開発されています。

電気炉工場は高炉工場に比べて必要な土地が少なく、生産規模の融通が利き、建設費用も抑えられます（300～1000億円、高炉は5000億～1兆円）。減価償却負担が軽く、市況に応じて操業を停止させることも容易です（高炉は一度火入れを行うと、設備上の問題で長期間操業を停止できません）。

電気炉は鉄スクラップを原料とするため、鉄スクラップが豊富な先進国で発展しやすい傾向があります。アメリカや日本では1980年代以降に発展しました。日本は90年代まで鉄スクラップの一部を輸入に頼っていましたが、その後自給化が進み、現在ではアジア諸国へ輸出する立場になっています。

電気炉で製造された普通鋼製品は、建築、土木、産業機械、造船などの材料として用いられます。また、精錬時に合金を添加し、自動車や建設機械の部品に利用されることもあります。

鉄スクラップを原料にすることで、環境保護、リサイクルの観点から重要な役割を担っています。鉄鋼メーカーからの自社発生屑、自動車工場や機械工場からの工場発生屑、建築物の解体屑、廃車、空き缶などからスクラップが採取されます。2004年における自社発生屑を除いた構成比は、工場発生屑が32%、建築廃材が25.5%、機械廃材が23.8%、土木廃材が15.9%、自動車廃材が15.5%でした。また、電気炉は高炉に比べ、生産量当たりの二酸化炭素発生量が少ないため、高炉メーカーも二酸化炭素発生量低減を目的に、原料の一部に鉄スクラップを使用しています。

高炉メーカーとの競争

電気炉メーカーは、高炉メーカーが得意とする市場に参入することもあります。1980年代には東京製鐵が大型H形鋼の市場に参入し、1990年代には熱延鋼板や表面処理鋼板の市場に参入しました。アメリカではニューコアが低コストを武器に鋼材シェアを高炉メーカーから奪取しました。2005年には東京製鐵が自動車用鋼材市場に初めて参入しました。

高炉メーカーも対抗し、1993年度から1996年度にかけてコスト削減に努め、電気炉メーカーのシェア拡大を阻止しました。

流通・販売の形態

電気炉メーカーは「店売り販売」を主体としています。これは、メーカーが流通業者との間で価格を決める方法です。一方、メーカーが鋼材の直接のユーザーと交渉して価格を決める方法を「ひも付き販売」と言い、高炉メーカーや特殊鋼メーカーが主に行います。

電気炉メーカーが店売りを主体とする理由は、原料の鉄スクラップ価格が日々変動するためです。先物による販売契約を結んでいると、鉄スクラップ価格が高騰した場合にコストが圧迫される恐れがあります。しかし、店売りであれば、鉄スクラップ価格が高騰しても、減産し流通業者への販売価格を引き上げることで、製品価格と材料価格の差を維持できます。

代表的な電気炉メーカー

日本

東京製鐵
JFE条鋼（JFEグループ系・JFEスチール子会社）
共英製鋼（日本製鉄グループ系のメーカー）
合同製鐵（日本製鉄グループ系のメーカー）
大阪製鐵（日本製鉄グループ系のメーカー）
トピー工業（日本製鉄グループ系のメーカー、兼業メーカー）
中山製鋼所（日本製鉄グループ系のメーカー）
ヤマトスチール（大和工業の事業子会社）
中部鋼鈑
朝日工業（元セゾン系の兼業メーカー）
新関西製鐵

韓国

東国製鋼
韓国鉄鋼

アメリカ

ニューコア

参考文献

山口敦 『鉄鋼 業界研究シリーズ』 日本経済新聞社 2006年10月 ISBN 4-532-11705-4

関連項目

日本の企業一覧 (鉄鋼)
日本鉄鋼連盟
普通鋼電炉工業会

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