需要の価格弾力性

需要の価格弾力性

需要の価格弾力性とは、ある財の価格が変動した際に、その財の需要量がどれだけ変化するかを示す指標です。具体的には、価格が1%上昇したときに、需要が何%減少するかを表します。

例えば、需要の価格弾力性が-2の場合、価格が1%上昇すると需要が2%減少することを意味します。通常、価格の上昇は需要の減少を招くため、需要の価格弾力性はマイナスの値をとることが一般的です。しかし、絶対値で表現することも多く、その場合は符号を省略します。

計算方法

需要の価格弾力性は、以下の式で計算されます。

math
e = \frac{\Delta q/q}{\Delta p/p} = \frac{(q^{\prime} - q)/q}{(p^{\prime} - p)/p}


ここで、

`p`: 初期時点の価格
`Δp`: 価格の変化
`q`: 初期時点の需要量
`Δq`: 需要量の変化

を示します。

例えば、ある商品の価格が100円から105円に上昇し（+5%）、需要が200単位から180単位に減少した場合（-10%）、需要の価格弾力性は、(-10%)/(+5%) = -2 となります。

通常財と例外

需要の法則に基づき、価格上昇は通常需要を減少させるため、多くの財において需要の価格弾力性は負の値を示します。このような財は通常財と呼ばれます。

ただし、ヴェブレン財やギッフェン財のように、価格が上昇すると需要も増加するという例外的な財も存在します。これらの財は、需要の価格弾力性が正の値をとります。

スルツキー方程式と消費者行動

スルツキー方程式を用いることで、代替効果と所得効果を分離し、より詳細な財の分類が可能になります。需要の価格弾力性は、消費税や関税が生産者と消費者のどちらにどれだけ負担されるかを分析する上でも重要な概念です。

価格弾力性の測定

価格弾力性を調査するためには、マーケティングリサーチやコンジョイント分析などの手法が用いられます。これらの手法を通じて、消費者の価格に対する反応を把握し、最適な価格設定や販売戦略を立案することができます。

問題点

需要の価格弾力性は、価格の変化幅によって異なる値を示すことがあります。また、価格が上昇する場合と下落する場合で、弾力性の絶対値が異なるという問題（インデックス・ナンバー問題）も存在します。

その他の定義

弧弾力性 (Arc elasticity): 価格と需要の変化の中間点を用いて弾力性を計算する方法。インデックス・ナンバー問題を緩和します。

math
e = \frac{\left(\frac {p_{1}+p_{2}}{2}\right)}{\left(\frac {q_{1}+q_{2}}{2}\right)}\times {\frac {\Delta q}{\Delta p}} = {\frac {p_{1}+p_{2}}{q_{1}+q_{2}}}\times {\frac {\Delta q}{\Delta p}}


点弾力性 (Point elasticity): 微分を用いて、価格と需要の微小な変化から弾力性を計算する方法。

math
e = {\frac {dq}{dp}}\times {\frac {p}{q}}

弾力的 vs. 非弾力的

弾力的: 需要の価格弾力性の絶対値が1より大きい場合。価格変化に対する需要の変化が大きい。
非弾力的: 需要の価格弾力性の絶対値が1より小さい場合。価格変化に対する需要の変化が小さい。
単位弾力的: 需要の価格弾力性の絶対値が1の場合。価格変化率と需要変化率が等しい。

歴史

アルフレッド・マーシャルが1890年の『経済学原理』で最初に定義したとされています。

限界収入との関係

限界収入(MR)は、需要の価格弾力性(e)を用いて以下の式で表すことができます。

math
MR = p\left(1 + \frac{1}{e}\right)

決定要因

需要の価格弾力性は、以下の要因によって影響を受けます。

代替品の存在: 代替品が多いほど弾力性は高くなります。
財のカテゴリーの幅広さ: カテゴリーが広いほど弾力性は低くなります。
所得に占める割合: 割合が高いほど弾力性は高くなります。
必需品かどうか: 必需品であるほど弾力性は低くなります。
価格変更の期間: 期間が長いほど弾力性は高くなります。
ブランド・ロイヤルティー: ロイヤルティーが高いほど弾力性は低くなります。
誰が支払うのか: 購入者自身が支払わない場合、弾力性は低くなります。
* 中毒性: 中毒性が高いほど弾力性は低くなります。

需要の価格弾力性は、企業の価格戦略や政府の政策立案において重要な役割を果たします。

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