震災手形

震災手形の概要と影響

震災手形（しんさいてがた）は、1923年に発生した関東大震災によって支払いが困難になった手形を指します。この手形は、当時の報道では「震手」とも略されていました。特別に発行された手形ではなく、被災地に関連する一般的な手形が、特別な勅令に基づいて日本銀行によって再割引され、補償対象となりました。再割引の際には特別なスタンプが押されて識別され、営業に関わる手形も混乱の中で多くが扱われました。

関東大震災とその影響

大正12年の9月1日に発生した関東大震災は、日本経済に壊滅的な損害をもたらしました。日本銀行の推計では、被害総額は45.7億円にも上り、当時の国家予算15億円と比較すると、非常に大きな数字であることが分かります。震災によって多くの企業が壊滅的な打撃を受け、支払いが不能になる事態が予想されました。

これを受けて、政府は震災直後の9月7日に緊急勅令を発し、特定の債務について支払い期限を延長する措置を取りました。被災地域の企業や住民が債務者となる金融債権に対し、支払いの猶予が与えられ、のちに割引手形が決済不能となった場合でも、経済活動が停滞することを避けるための対応が求められました。

震災手形の特徴と再割引制度

9月29日には震災手形割引損失補償令が発令され、被災地で発行された手形に対して日本銀行が再割引を行うことが決定されました。これにより、日本銀行は現金を供給し、企業が再建に必要な流動性を確保できることを目指しました。支払いの猶予は2年間とされ、日本銀行が損失を被った場合には政府が最高1億円まで補償するとの内容でした。

その後、震災手形については何度か法令が改正され、再割引の期限が延長されるなど、世界的な金融不安の中での処理が進められました。しかし、震災の影響を受けた手形の中には本来の被災とは無関係なものも混じっていたため、その選別が問題視されました。

不良債権化と経済への影響

震災手形による支援措置は一見、企業救済に役立つように思えましたが、実際には悪化した金融事情や不良債権の増加を招く結果となりました。特に、震災の影響を受けた企業の中には、単にリスクの高い手形が混じり込み、実際には支払いの見込みのない手形が大量に紛れ込むことで、経済的な混乱がさらに深刻化しました。

経済全般として見れば、震災前から続いていた在庫の過剰供給や緊急輸入が災いし、復興景気を妨げ、震災手形の不良債権化を助長しました。とりわけ、震災手形の処理を巡る政争が1927年には昭和金融恐慌を引き起こし、深刻な経済危機をもたらすこととなりました。

結論

震災手形は単なる金融商品ではなく、関東大震災による経済への影響を象徴する存在となりました。被災地の企業再建の施策として設計されたものの、実際には多くの問題を抱え、深刻な金融危機を引き起こす一因となったことから、歴史的な教訓としても忘れてはならない重要な事例です。

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