靄

靄（もや）について

靄とは、空気中に漂う微細な水滴や吸湿性の微粒子によって視界が低下している状態のことを指します。具体的には、視程が1キロメートル以上ある場合を靄と呼び、この時の空は通常、灰色がかって見えるのが特徴です。

靄の特徴

靄が発生しているときの相対湿度は、一般的に75%を超えることが多いですが、100%には達しません。対照的に、霧は湿度が100%近く、視程が1キロメートルを下回る場合に見られる現象です。このように、靄と霧は湿度の違いや視程によって判別されます。また、靄では溶質の多い吸湿性微粒子が関与し、霧では水滴の粒子が主に存在します。さらに、靄は通常薄く灰色がかっていますが、霧は白っぽく濃いことが多いです。

実際には靄と霧は連続的に変化するもので、湿度が充分に高い状況では霧として認識されることが多く、視程によって二つの現象を区別します。乾燥した状態においては、乾燥した粒子が多い煙霧が発生することもあります。このため、靄の形成メカニズムには湿った吸湿性の粒子が大きく関与しています。

靄の形成メカニズム

靄の発生には、湿度が75%を下回る状態では非吸湿性の粒子が、湿度が高い状態では吸湿性の粒子が凝結核として機能します。非吸湿性の粒子は、過飽和な状態の空気中で水滴を形成しますが、吸湿性の粒子は水に溶けた際の蒸気圧の低下によって、湿度100%未満の状態でも微小な水滴を生成することが可能です。

日常的に空気中にはさまざまな種の凝結核が存在しており、湿度の高い状況が続くと吸湿性の粒子が活性化し、靄を形成する要素となります。具体的には、海塩粒子や燃焼によって生成される粒子など、吸湿性が特徴的なものが多く見られます。また、大気汚染物質、例えば硫酸塩や硝酸塩、その他の有機物が靄の元となることもあります。排出源からの風の影響で、これらの物質が遠く離れた地域でも靄を引き起こすことがあります。実際、中国大陸方面からの影響で沖縄県に靄が発生した事例も報告されています。

靄と文化

靄はしばしば「霞」と呼ばれる現象と関連付けられることがあります。このような情景は、しばしば寂しさや幻想と結び付けられるため、文学や詩の中にも多く取り上げられています。たとえば、廃墟に靄が漂う風景を表現した慣用句「寒煙迷離」などが存在します。

靄は、その美しさから観光地での風景としても評価されており、そんな情景に彩りを加える自然現象として親しまれています。特に霧虹という現象もまた、靄の中で見られることがあり、これが視覚的な魅力を更に高めています。

参考文献

• - 『最新気象の事典』東京堂出版、1993年
• - 『気象観測の手引き』気象庁、1998年（平成10年）9月発行・2007年（平成19年）12月改訂

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