視程

視程（してい）とは

視程とは、肉眼で物体がはっきりと確認できる最大の距離のことです。これは、大気の透明度を示す指標であり、気象状況を把握する上で重要な要素となります。

視程の種類

視程にはいくつかの種類があり、それぞれ定義と用途が異なります。

水平視程: 一般的に「視程」という場合、水平方向の視程を指します。これは、地上における水平方向の見通し距離を示します。
卓越視程: 飛行場などで用いられる視程の指標で、全方向の視程距離の平均的な値を指します。日本やアメリカの飛行場で採用されています。
鉛直視程: 濃霧などの際に、鉛直方向の見通し距離を示す指標です。航空気象の分野で利用されます。

視程の定義と観測

視程の計測は、目視と機械計測の2つの方法で行われます。

目視による観測

目視観測では、観測地点から距離が既知の目標物（建物、山など）を目視し、どの目標物まで見えるかによって視程を判断します。目標物は、100mから100km程度の範囲で、暗い色のものが選ばれることが多いです。

機械計測

機械計測では、視程計を用いて気象光学距離（MOR）を計測します。気象光学距離は、2700Kの白熱灯の光が、大気中の粒子によって散乱・吸収され、照度が元の値の5%にまで減少する距離として定義されます。

航空分野における視程の定義

国際民間航空機関（ICAO）は、国際民間航空条約において視程の定義を定めています。

視程: 明るい背景の中で、観測に適した大きさの黒色の物体を見て、認識できる最大の距離。
滑走路視距離（RVR）: 滑走路のセンターライン上にある航空機のパイロットが、滑走路の表面にあるマークやライトを識別できる距離。滑走路視距離計（RVR）で観測します。

視程の変化とその原因

視程が通常よりも小さくなる現象は、気象学で視程障害と呼ばれます。視程障害の主な原因は以下の通りです。

降水: 雨、雪、霰（あられ）、雹（ひょう）などの降水は、視界を遮り視程を悪化させます。
霧・靄（もや）: 大気中の水蒸気が凝結して発生する霧や靄は、視界を遮る代表的な視程障害です。霧は視程が1km未満、靄は1km以上10km未満と定義されています。
地吹雪: 地面に積もった雪が風によって巻き上げられ、視界を遮ります。
煙霧: 煙、煤（すす）、塵（ちり）、埃（ほこり）、砂などの微粒子が大気中に浮遊し、視界を悪化させます。工場からの排煙や砂嵐などが原因となります。
黄砂: 中国大陸の砂漠地帯から飛来する黄砂は、大気中の微粒子濃度を高め、視程を著しく低下させることがあります。

視程の低下は、交通機関の運行に大きな影響を与える可能性があります。特に航空機の運航においては、視程が一定の基準を下回ると、離着陸が制限されることがあります。また、自動車の運転や歩行においても、視界が悪化することで交通事故のリスクが高まります。

視程障害への対策

視程障害が発生しやすい地域や状況においては、以下のような対策が重要となります。

気象情報の収集: 最新の気象情報を収集し、視程の悪化が予想される場合は、外出を控えるなどの対策を検討します。
安全運転の徹底: 自動車を運転する際は、視界が悪化している状況を考慮し、速度を落とし、車間距離を十分に確保するなど、安全運転を心がけましょう。
* 航空機の運航管理: 航空会社や空港は、視程の状況に応じて、適切な運航管理を行う必要があります。必要に応じて、出発の遅延や欠航などの措置を講じます。

視程は、私たちの生活や社会活動に大きな影響を与える気象要素の一つです。視程に関する正しい知識を持ち、適切な対策を講じることで、安全で快適な生活を送ることができます。

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