青い冠の聖母

『青い冠の聖母』

『青い冠の聖母』は、盛期ルネサンスの著名画家ラファエロ・サンティとその弟子ジャンフランチェスコ・ペンニによる合作です。この作品は、板に油彩で描かれたもので、現在フランス・パリのルーヴル美術館に所蔵されています。一般には「青い冠の聖母」や「ヴェールの聖母」として知られていますが、他にも「リンネルの聖母」や「まどろむ幼児キリスト」、「沈黙の聖母」といった異名も持っています。

来歴

『青い冠の聖母』は、過去にペーシャで二枚に裁断された後、樽の蓋として使用され、その後再発見されて巧みに修復されました。類似した別のヴァージョンも存在し、こちらは三連祭壇画の形式になっていましたが、こちらも修復されています。この作品は16世紀末にはパリのシャトーヌフ・コレクションに収蔵され、ド・ラ・ヴァリエール侯爵家に渡ることで、1620年にはフランスの外務大臣のコレクションに存在していました。それ以降、作品はフランス王ルイ14世の子息、トゥールーズ伯の所有となり、その後サヴォイア＝カリニャーノ家のコレクションに移動しました。

1728年から1743年まで、カリニャーノ公ヴィットーリオ・アメデーオ1世がこの絵画を所蔵していました。しかし、彼が亡くなると、息子であるルイージ・ヴィットーリオがコレクションを継承し、1743年には画家リゴーの仲介でフランス国王ルイ15世に売却されています。ラファエロがそれ以外の独立した作品をフランス王家に加えたのは、この1742年のルイ15世の購入が最後となります。

外観

『青い冠の聖母』の作者については議論がありますが、構成にはラファエロの影響が色濃く残っています。色彩は非常に鮮やかで、特に酸性の色合いが目を引きます。陶磁器のような仕上げからも、実際に作品を完成させたのはラファエロの弟子、ジャンフランチェスコ・ペンニであることが推測されており、1518年頃の制作であると考えられています。

この作品では、眠っている幼児キリストの上に、マリアが右手でヴェールを掲げています。ルネサンス期において、マリアのヴェールは生まれたばかりのキリストを包み込む象徴的な意味合いを持ち、将来の磔刑を暗示するものともされています。キリストは鑑賞者の方に顔を向けており、赤いアンダードレスのチュニックを着たマリアは、左手で幼児洗礼者聖ヨハネの肩を抱いています。この時、キリストは正面を見つめていますが、マリアとヨハネは横顔で描かれており、対称的な構図が特徴的です。

『青い冠の聖母』は、ラファエロの別の作品である『ロレートの聖母』といくつかの点で似ていますが、背景には崩れ落ちたヴィッラ・サケッティや忘れ去られた葡萄畑が描かれており、ラファエロはこの作品に劇的な要素を加えています。また、キリストの容姿や身体表現も洗練されており、静かで安らかな印象を与えるのに対し、ヨハネは畏敬の念を持って祈る表情が描かれています。

このように、『青い冠の聖母』は色彩、構成、歴史的背景において非常に魅力的な作品であり、ラファエロの才能とその影響を受けた弟子の技術を感じさせる重要な絵画です。

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