青い旋律

青い旋律

梶山季之による長編小説『青い旋律』は、1969年から女性週刊誌『女性セブン』に連載され、1970年に集英社から単行本として出版されました。本作は、フェティシズムや同性愛といった当時のタブーに挑戦し、人間の欲望と心の闇を深く掘り下げた風俗小説として知られています。

あらすじ

物語は、嵐の夜、主人公である草間三代子が、帰宅しない父・浩介を不審に思う場面から始まります。父の部屋で偶然見つけた日記を盗み見た三代子は、そこに書かれた内容に衝撃を受けます。さらに、父宛に見知らぬ女性からの電話がかかってきたことで、彼女は大きな戸惑いを覚えます。

物語は、三代子が父の秘密と、日記に登場する謎の女性「M」の正体を追う中で、様々な人物と出会い、複雑な人間関係が明らかになっていくという展開を見せます。

登場人物

草間三代子: 20歳過ぎの独身女性。短大卒業後、赤坂の洋楽プロモーターに勤務。父とマンションで二人暮らし。亡くなった母の代わりに家事をこなすしっかり者だが、父の秘密を知り、混乱する。
草間浩介: 三代子の父。帝都銀行の銀座支店長。45歳。女性の血を見ると興奮するという、秘められた性癖を持つ。日記には、恋心を抱く「M」への想いが綴られている。
M: 浩介が日記の中で想いを綴る謎の女性。三代子は彼女の正体を探ろうとする。
多和田マリ子: 帝都銀行の本店に勤務する浩介の元部下。草間父子の家に書類を届けに来たことがある。
木崎礼吉: 三代子が務める洋楽プロモーターの支配人。海外経験豊富な30歳の独身男性で、マゾヒストである。
山田佐喜子: 婦人雑誌記者。ゲイバーやレズビアンバーに詳しく、三代子の高校に教育実習に来たことがある。三代子の相談相手となる。
サクラ: ゲイバーの美人ホステス。本名は俊夫で、三代子の高校時代の同級生。女性が好きで、三代子とキスをする。
スミレ: ゲイバーのホステス。長崎出身で、男性が好き。
竹林四七子: 浩介の秘書。レズビアン。
岡康子: 四七子の愛人。バイセクシャルで夫と子供がいる。
長浜昭: 女性的な容姿の若いヴァイオリニスト。長靴フェチで、女物のゴム長靴を愛用する。女装をしてレズビアン女性と愛し合う。
夏子: 昭の実家である大医院の看護婦長。ゴムマニアの女性。
轟マリ子: 洋楽プロモーターの女社長。木崎の上司。レズビアンで、可愛い女の子や女装した男性が好き。
黒崎芽里: マリ子の親友で、女学生時代からの恋人。レズプレイ相手であり、靴フェチでハイヒールを好む。
光村美津江: 宝石商の女社長。大阪出身で太っており、男をいたぶるプレイを好む。
国分寺の女王: 手記や手紙の中に登場するSMの女王様。マゾヒストの女性とプレイをする。その正体は物語が進むにつれて明らかになる。

テーマ

本作は、人間の欲望の多様性と、社会的な規範から逸脱した性的な嗜好をテーマとしています。登場人物たちの複雑な関係や、心の葛藤を通じて、人間の奥底に潜む欲望や、社会のタブーに切り込んでいます。また、単なる風俗小説としてではなく、人間の心理を深く掘り下げた作品として、読者に様々な問いを投げかけます。

連載と出版

『青い旋律』は、連載当時から大きな話題を呼び、単行本出版後も多くの読者に読まれました。掲載された内容の一部は、『性科学XYZ』にも収録されています。また、作者の梶山は、本作執筆にあたり、「現代の隠された病根、風俗、流行などを、読者に伝えること」を自身の仕事であると述べています。

特記事項

本作は、甲秀樹の同名作品集とは無関係です。梶山は、連載にあたり「格好の新材料を得たと自負している。私は、ひどく胸を高鳴らせている。私の会心作になりそうな気がするからだ」と語り、作品に対する自信を表明しています。

『青い旋律』は、1970年代の社会風俗を反映した作品でありながら、現代においても、人間の欲望や心の闇を描いた作品として、深く考えさせられる作品です。

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