青図

青図：時代と共に姿を消しつつある技術遺産

かつて建築現場や設計事務所では、青色の線で描かれた図面、いわゆる「青図」が広く使われていました。これは、原図を専用の感光紙に焼付することで作成され、青写真や青焼きとも呼ばれていました。

青図の作成には、まずトレーシングペーパーに手書きで作成された図面を、ジアゾ複写機という機械を用いて複製するという工程が必要でした。このジアゾ複写機は、感光紙に原図を露光することで、青色の線で図面を複製する仕組みです。露光時間は、感光紙の感度や複製速度によって調整されました。感光紙は保存状態が悪く、光に当たると感光してしまうという欠点もあり、保存状態が悪く感光してしまった状態のことを「風邪を引いた」と表現することもありました。

青図が広く用いられていた背景には、コストの安さと手軽さがありました。しかし、コンピュータ技術の発展により、CAD（Computer Aided Design）が普及し始めると、状況は一変します。CADを用いれば、図面をデジタルデータとして作成、保存、そして必要な枚数だけ簡単に印刷することができるようになったのです。これにより、青図のように複写する必要がなくなっただけでなく、図面は白黒の普通紙に印刷されることが主流となり、「白焼き」と呼ばれるようになりました。

青図は、その鮮明度の低さから、手書きの数字などが判読しにくいという欠点がありました。しかし、寸法そのままに図面が複製されるため、物の大きさを正確に把握する上で非常に重要な役割を果たしていました。現在でも、CAD図面であっても、寸法表記の正確性に疑問がある場合、実測が必要になることがあります。青図の持つこの正確性は、デジタル化された現在においても、改めて評価されるべき点です。

近年では、青図を作成するジアゾ複写機自体が製造中止となり、保守や消耗品の供給も終了しています。製図台や定規と共に、青図は多くの現場事務所から姿を消しつつあり、もはや過去の技術遺産になりつつあると言えるでしょう。

しかし、「青図を描く」という表現は、現在でも「計画を立てる」「完成予想図を作成する」といった意味で用いられています。これは、青図がかつて設計図面の中核を担っていたことを示すものであり、その歴史的、文化的意義は依然として残されています。

このように、青図は、技術革新によって淘汰されつつある一方で、その言葉や概念は、現代社会においても重要な意味を持ち続けていると言えるでしょう。かつて青図が担っていた役割、そしてその背景を知ることは、現代の技術や社会を理解する上で、重要な知見となるはずです。 青図という技術は失われつつありますが、その歴史と技術的背景、そして「青図を描く」という表現が持つ意味合いは、これからも語り継がれていくべきものです。

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