青山悟

青山悟：ミシンを媒介とした労働とテクノロジーへの問い

青山悟は、1973年生まれの日本の現代美術家です。彼の作品は、ミシンという日常的な道具を用いながら、労働、テクノロジー、そして人間の存在といった根源的なテーマを探求しています。幼少期から美術に触れる環境で育ち、大学ではテキスタイルアートを専攻する中で、ミシンが彼の表現の中心となりました。

美術との出会いとミシンとの邂逅

青山悟の美術との出会いは、洋画家であった祖父の影響によるものでした。幼い頃から祖父の制作風景を目にし、小学校の文集には「一流の画家になる」と将来の夢を綴っていました。しかし、大学受験ではイギリスのゴールドスミス・カレッジのファインアート科に不合格となり、テキスタイルアート科に進学します。そこで出会ったのがミシンでした。

テキスタイルアート科では、ミシンだけでなく機織り、編み物、手縫いなど様々な技法を学びましたが、なぜかミシンだけは最初から上手く使いこなすことができたそうです。他の技法は「絶望的に下手だった」と青山は語ります。古い機械の持つ美しさに惹かれた彼は、ミシンを制作の道具として選ぶことになりました。

ミシンが持つ二面性

ミシンは、大量生産の象徴であり、その普及は労働問題とも深く関わっています。青山悟は、ミシンが持つそのような二面性に注目しました。彼は、ミシンを使う行為を「古い労働の在り方」と捉え、それを通して現代社会における労働やテクノロジーについて考察しています。彼の作品は、古くからある労働の形を現代に持ち込むことで、人間の労働の本質や、テクノロジーの進化がもたらす変化について問いかけています。

アーツ・アンド・クラフツ運動への関心

近年、青山はアーツ・アンド・クラフツ運動の創始者であるウィリアム・モリスの言葉を引用することが多くなりました。しかし、彼が興味を持っているのは思想そのものよりも、思想と美意識の結びつき方だと言います。モリスの言葉を借りながらも、自らの視点から現代社会を捉え直そうとする姿勢が見て取れます。

多様な個展とグループ展

青山悟は、国内外で多数の個展を開催しています。2002年にはアメリカのギャラリーで個展を開催し、2004年には水戸芸術館で個展「クリテリウム60青山悟」を開催しました。その後も、東京、ロンドン、シカゴなど、様々な場所で個展を開き、作品を発表し続けています。

グループ展への参加も多く、2006年には「ニューアート展 2006［布と糸のかたち］」に参加し、2010年には森美術館で開催された「六本木クロッシング2010 展：アートは可能か？」にも参加しました。また、2017年には「ヨコハマトリエンナーレ2017」に出展するなど、国内外の重要な展覧会で活躍しています。

メディア出演と活動

2021年には、テレビ番組「アルスくんとテクネちゃん」に出演し、作品制作の背景や自身の考えを語りました。また、自身のウェブサイトやミヅマアートギャラリーのウェブサイトを通じて、作品や活動を紹介しています。

青山悟の作品は、ミシンという身近な道具を通して、私たちが普段意識しない社会の構造や労働の在り方を問い直すきっかけを与えてくれます。彼の活動は、現代美術の世界において、ますます注目を集めています。

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