青年の肖像

『青年の肖像』、または『若者の肖像』として知られるこの絵画は、サンドロ・ボッティチェッリ（1446–1510）に帰属される肖像画であり、イタリア・ルネサンス美術の代表的な作品の一つです。1480年代初頭（1482年から1485年頃）にテンペラを用いてパネルに描かれ、現在はワシントンD.C.のナショナル・ギャラリーに所蔵されています。

この作品は、1922年に美術史家のバーナード・ベレンソンによってボッティチェッリの真作として鑑定されました。それまでは作者不明とされていましたが、ベレンソンの研究によって、ボッティチェッリ特有の繊細な筆致や人物表現が認められました。

絵画に描かれた青年は、穏やかな表情で鑑賞者を見つめています。ボッティチェッリは、この作品において、若者の内面の美しさを巧みに表現しており、その表情は憂いを帯びているようにも見えます。特に注目すべき点は、その優雅な手のジェスチャーです。この手の表現は、ボッティチェッリの作品によく見られる特徴であり、人物の繊細さや内面を際立たせる効果があります。

また、この青年の手の形状から、一部の研究者たちは若年性関節炎やマルファン症候群の初期の兆候ではないかと指摘しています。しかし、これはあくまで推測であり、確定的な医学的診断ではありません。ボッティチェッリは、単に芸術的な表現としてこのような手の形状を描いた可能性も十分にあります。

『青年の肖像』は、ボッティチェッリの卓越した技術と、ルネサンス期における肖像画の発展を示す重要な作品として、現在も多くの人々を魅了し続けています。この絵画は、単なる肖像画としてだけでなく、当時の文化や社会、そして人間の内面を探求する上で貴重な資料となっています。

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