青砥武平治

青砥 武平治の生涯と業績

青砥武平治（あおとぶへいじ）は、江戸時代中期、越後国の村上藩に仕えた武士であり、漁業振興において特に重要な役割を果たしました。彼の最も有名な業績は「種川の制」と呼ばれる、サケの自然孵化のための増殖方法の創設です。この方法は、当時の村上藩におけるサケ資源の持続可能な管理に大きな影響を与えました。

生い立ち

青砥武平治は、正徳3年（1713年）に村上藩士の金沢儀左衛門の二男として越後国の岩船郡村上町に生まれました。彼の名は綱義であり、幼少期には青砥治兵衛の養子となったため、青砥姓を名乗ることになりました。武平治は「三両二人扶持」という身分の低い武士として生活を始めましたが、その後、明和3年（1766年）には70石の「石取り侍」に昇格しました。この昇進は、村上藩の中で異例のものであり、彼の能力と貢献が評価された結果といえます。

漁業と「種川の制」

青砥が生きた時代の村上藩では、サケが重要な経済資源でした。しかし、乱獲の影響により、サケの漁獲量は減少し、1720年頃にはほとんど獲れなくなる危機に直面していました。武平治は、サケの母川回帰の習性を理解し、それを基にして漁業の持続可能性を見出しました。

具体的には、遡上する三面川を三つに分流し、そのうちの一つの流れでサケを保護することを提案しました。この保護方法には、産卵に適した場所に柵を設け、サケが遡上できるように工夫を凝らしました。この取り組みが「種川の制」として知られるようになり、実施から約30年間にわたり、サケの漁獲量は劇的に増加し、導入前の200両から300両だった漁獲高が1,000両を超えるまでに至りました。

この成功により、青砥武平治はサケの自然孵化における先駆者として評価されるようになりました。彼の手法は後の時代にも影響を与え、1794年までにさらに拡張されることとなりました。また、文化3年（1806年）には出羽国庄内藩でも同様の手法が取り入れられ、明治時代に入ると北海道の石狩川などでも採用されることとなりました。

影響と評価

青砥が確立した「種川の制」は、サケ増殖における自然な手法の礎となり、日本の漁業に深い影響を与えました。彼が取り組んだ自然孵化増殖は、明治時代に人工孵化が普及するまでの約100年間、日本のサケ増殖の主流であり続けました。彼の業績は、後の漁業関係者や研究者にとって、重要なモデルとなり、持続可能な資源管理の先駆けとされています。

終わりに

青砥武平治は、1788年に76歳でその生涯を閉じました。彼の生涯と功績は、現在も多くの人々に語り継がれており、日本の河川や漁業の歴史において重要な位置を占めています。彼の革新的な取り組みは、現代の漁業にとっても示唆に富む教訓を提供しており、持続可能な資源利用の道筋を示したといえるでしょう。

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