静おばあちゃんにおまかせ

概要

『静おばあちゃんにおまかせ』は、中山七里による連作短編推理小説である。2012年に文藝春秋から単行本として発売された本作品は、『別册文藝春秋』に隔月で連載されていた。著者はコージー・ミステリーが人気を博していた当時の出版社の方針を踏まえ、ヒロインにおばあちゃんと孫娘の設定を盛り込むことを決意した。特に、中山の心にミス・マープルの存在が強く影響を与えており、現代のミステリー設定に祖母と孫の温かい関係を巧みに取り入れた。魚の目撃者として、静おばあちゃん（高遠寺静）が非公式ながらも事件の解決に尽力し、まさに安楽椅子探偵としての腕を振るう。

登場人物

• - 高遠寺 静: 元裁判官であり、厳しいが優しい祖母。昔の価値観を持ちつつ、孫娘の円に日常の法や人生の教訓を伝えている。日々の出来事に興味を持ち、自然に事件を解決に導く力を持つ。
• - 高遠寺 円: 法学科に通う女子大生で、祖母の静に育てられながらも自らの道を模索する。過去の事故で両親を失い、そのことが彼女の成長に影響を与えている。着実に法律家としての道を進もうとしている。
• - 葛城 公彦: 警視庁捜査一課の刑事。特異な風貌と無邪気さで周囲の信頼を得ているが、自他ともに恋愛には進展が少ないという難しさを抱えている。

作品の構成

本作は五つの短編で構成され、それぞれの物語は異なるが共通するテーマを持っている。それぞれの事件は、静おばあちゃんの知恵や円の若さが交じり合い、互いの成長を実感させられる展開となっている。

• - 静おばあちゃんの知恵: 横浜で発生した暴力団関係の殺人事件を静の洞察で解決する。
• - 静おばあちゃんの童心: 美緒という大学生が祖母の変死を通じて事件に巻き込まれ、その真相を掘り下げる。円が友人と一緒に事件を解決に導く役割を果たす。
• - 静おばあちゃんの不信: 宗教団体から一人の女性を引き戻すための葛城の任務と、円が両親の死に絡む事件に向き合う姿勢が描かれる。
• - 静おばあちゃんの醜聞: クレーン作業員の不慮の死を巡るサスペンスが繰り広げられ、円が以前の出来事に関連付けて謎を解く。
• - 静おばあちゃんの秘密: 政治的な緊張感を持つ中で、大統領の暗殺に隠された真実にたどり着くまでの過程が描かれ、円の成長が如実に表れる。

書評と評価

本作は、作品の各短編がアップビートな雰囲気を持ちつつ、深刻なテーマを取り扱っている点で評価されている。書評家は、『アーモンド入りのチョコレート』のような裏切りのある魅力的な作品であると称賛し、著者の才能が詰まった一冊としての存在感を示している。
また、ミステリーの根幹とも言えるトリックの巧妙さについても言及され、先人たちの影響を受けつつも独自の視点で新しい価値を見出す試みが評価されている。このように、『静おばあちゃんにおまかせ』は、ただのミステリー小説にとどまらず、深い人間ドラマと感情をも描き出す作品である。

テレビドラマ化

本作は2018年にテレビドラマ化され、放映されると共に多くの視聴者に支持を受けた。原作の魅力をそのままに映像でも表現されており、キャストの演技によって新たな息吹が吹き込まれた。

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