静かなる叫び

静かなる叫び：モントリオール理工科大学銃乱射事件の記憶

2009年、カナダで制作されたドゥニ・ヴィルヌーヴ監督による映画『静かなる叫び』（原題：Polytechnique）は、1989年12月6日にモントリオール理工科大学で発生した凄惨な銃乱射事件を題材とした社会派ドラマです。全編モノクローム、ワイドスクリーンという映像表現で、事件の悲劇性を際立たせ、観る者の心に深く刻まれる作品となっています。

物語：事件とその後の余波

映画は、モントリオール理工科大学で起きた銃乱射事件の衝撃的な出来事を克明に描きながら、事件から生き残った女子学生ヴァレリーと、彼女を救おうと必死に奔走した男子学生ジャン＝フランソワのその後の人生に焦点を当てています。事件の混乱の中で、それぞれが負った傷、そして心の傷。生き残った者たちがその後どのように生きていくのか、その苦悩と葛藤が丁寧に描かれています。

ヴァレリー役にはカリーヌ・ヴァナッス、ジャン＝フランソワ役にはセバスティアン・ユベルドーといったカナダを代表する俳優陣がキャスティングされ、彼らの繊細な演技が、物語に深みを与えています。 事件の加害者や、事件に巻き込まれた他の学生たちの描写も含まれており、多角的な視点から事件の悲劇を浮き彫りにしています。

映画的表現：モノクロームが際立たせる現実

『静かなる叫び』は、全編モノクロームで撮影されている点が特徴的です。彩色のない映像は、事件の生々しさや悲惨さをより強調し、観る者に強い衝撃を与えます。ワイドスクリーンによる映像表現も、事件の広がりと、登場人物たちの心の内面を表現する上で効果的に機能しています。

評価と受賞歴

本作は、批評家からも高い評価を得ています。Rotten Tomatoesでは、批評家の87％が肯定的な評価を与え、Metacriticでも高いスコアを獲得しています。第30回ジニー賞（カナダの映画賞）では、作品賞、監督賞、脚本賞など主要9部門を受賞する快挙を成し遂げました。

日本の公開

日本では2017年1月、「未体験ゾーンの映画たち2017」という枠組みで上映され、日本国内でも高い評価を得ています。この事件はカナダ社会に大きな衝撃を与え、多くの人々の記憶に深く刻まれています。本作は、その記憶を呼び起こすとともに、暴力の悲劇と、そこから立ち上がろうとする人々の強さを描いた、忘れられない映画となっています。

まとめ

『静かなる叫び』は、単なる事件の記録映画ではありません。事件を背景に、人間の心の深淵、そして生きることの尊さを問いかける、深く考えさせられる作品です。モノクロームの映像と、俳優陣の魂を揺さぶる演技、そして重厚な演出は、観る者の心に長く残り続けるでしょう。この映画を通して、モントリオール理工科大学銃乱射事件という悲劇を改めて認識し、平和の大切さを再確認する機会となるはずです。 静寂の中で響き渡る、静かなる叫びは、今もなお、私たちの心に問いかけ続けています。

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