静修女学校

静修女学校（東京麹町）

明治時代の日本の女子教育史において、米国聖公会が東京麹町に設立した「静修女学校（Young Ladies' Institute）」は、短いながらも意義深い歴史を持つミッションスクールです。立教大学（設立当時は立教大学校）や立教女学院（設立当時は立教女学校）といった聖公会系教育機関の姉妹校にあたり、1889年（明治22年）に開校しました。しかし、1902年（明治35年）には閉鎖・廃校となり、その校舎や生徒は津田梅子氏の『女子英学塾』（現・津田塾大学）に引き継がれました。同名異校がいくつか存在するため、この東京麹町の米国聖公会系学校を特定する必要があります。

静修女学校は、米国聖公会ニューヨーク教区婦人会の基金を元に設立が計画されました。1888年（明治21年）、米国聖公会外国委員会は女性宣教師マーサ・アルドリッチ氏を責任者に任命し、アルドリッチ氏は同年11月に東京に着任しました。翌1889年（明治22年）4月20日、静修女学校が開校し、アルドリッチ氏が初代責任者となりました。この学校は、主に上流家庭の若い女性を対象とし、自立を目指す教育を施しました。開校当初の生徒は9名でしたが、すぐに19名に増えました。1890年（明治23年）10月には、アイダ・ゲップ氏も宣教師として着任し、学校運営を支えました。

学校には日本人校長も就任しました。1890年（明治23年）には日本聖公会の聖職者である田井正一氏が、そして1893年（明治26年）には華族女学校の教師であった石井筆子氏（当時は渡辺筆）が校長を務めました。石井筆子氏は後に著名な女子教育者となり、静修女学校での経験もその活動の一環でした。彼女の夫、石井亮一氏も一時期講師を務めました。石井筆子氏は1899年（明治32年）に校長を退任しています。

静修女学校は1902年（明治35年）に閉校となりましたが、その教育の火は消えませんでした。学校の資産と在籍生徒は、同じく熱心な聖公会信徒であり、日本の女子教育に貢献した津田梅子氏の『女子英学塾』に引き継がれたのです。津田梅子氏と石井筆子氏は華族女学校で同僚であり、個人的にも親しい関係でした。筆子氏が静修女学校の経営に関わる中で津田氏も支援しており、こうした繋がりが円滑な継承に繋がったと考えられます。

静修女学校はわずか13年間の歴史でしたが、明治期のミッションスクールによる女子教育の一例として、また後の津田塾大学へと続く歴史の一部として、日本の教育史において重要な位置を占めています。外国人宣教師と日本人教育者が共に歩んだ、当時の女子教育の姿を示す一校と言えるでしょう。

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