静岡電留線

静岡電留線（しずおかでんりゅうせん）

東海旅客鉄道（JR東海）が運営する東海道新幹線において、車両の留置や整備準備のために設けられている施設の一つに、静岡電留線があります。その名称は「しずおかでんりゅうせん」と読みます。

この施設は、静岡県静岡市葵区の東静岡駅にほど近い柚木地区に位置しています。この場所は、電留線が建設された当時は在来線の駅が存在しない地域でした。東海道新幹線における主要駅である静岡駅から東京方面へ約2.8キロメートル離れた地点に設置されています。

静岡電留線が誕生したのは、1966年（昭和41年）9月のことです。この時期に行われたダイヤ改正により、静岡地区で夜間などに滞泊する新幹線車両の本数が増加しました。これに伴って車両を効率的に留置するスペースが必要となり、当初は2線の留置線として設けられました。

施設構造としては、東海道新幹線の下り本線に並行する形で南側に配置されています。車両がこの電留線へ入線する際は、静岡駅側から分岐して進入する形が取られています。このように、本線から比較的スムーズに車両を出し入れできる構造となっています。

静岡電留線の主な役割は、終電後の新幹線車両の夜間留置場所として機能することです。特に、翌朝早くに静岡駅を始発として運転される「こだま」号などの列車に充当される車両は、ここで夜を明かします。これにより、早朝からの効率的な列車運行が可能となっています。車両がここで夜間を過ごすことで、早朝の出庫点検なども行われ、安全運行が支えられています。

また、新幹線本線を挟んでこの電留線と反対側、つまり北側には、東海道新幹線の線路や電気設備などの保守作業を行うための基地が設けられています。これにより、電留線に留置された車両の近傍で保守作業が進められるなど、施設間の連携も見られます。

興味深い点として、この静岡電留線が建設された用地には、特異な経緯があります。実は、この土地は当初、将来的な新幹線での貨物輸送計画において、静岡における主要な貨物取扱駅（柚木貨物設備）を設置するために準備されていたものでした。しかし、新幹線による本格的な貨物輸送が実現しなかったため、当該用地が転用され、現在の車両留置線として活用されることになったのです。これは、新幹線計画の初期段階における構想の一端を示すエピソードと言えます。

静岡電留線は、普段一般の目に触れる機会は少ない施設ですが、東海道新幹線の安定した運行、特に早朝の列車運用において重要な役割を果たしています。車両の効率的な配置や夜間滞泊を担うことで、日々の安全かつ定時運行を支える基盤となっています。

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