静脈認証

静脈認証について

静脈認証とは、人体の皮膚下に存在する静脈の形状パターンをもとにした生体認証技術です。この方法は、主に指、手のひら、手の甲など、腕から先の部位を用いて実施されます。日立製作所などの企業が指の静脈を活用した事例を持ち、富士通は手のひらの静脈を利用しています。他にもNECが指の静脈を用いた技術を開発していますが、これは指紋認証の補完として特定の用途に限定されています。

概要

指や手のひらに存在する静脈パターンは、指紋や虹彩のように個々人に特有で、同じ人物であっても異なる指や手のひらにはそれぞれ異なるパターンがあります。このため、静脈認証は非常に高い精度を誇ります。

原理

静脈認証の仕組みは、近赤外線LEDとモノクロCCDカメラを利用した機器に、使用者が指または手のひらをかざすことで始まります。血液中のヘモグロビンが近赤外光を吸収するため、静脈パターンが暗い線の形で確認できます。この画像が録画され、デジタル化された後、適切な処理を経てデータベースに保存されます。認証の際には、スキャンされたデータが登録データと照合され、通常は2秒以内で結果が出ます。

利点

この生体認証方式は、本人拒否率や他者受容率という指標においても非常に高めの数値を示し、最も高精度とされます。他の生体認証方式と異なり、体内の情報を使用しているため、静脈パターンを偽造することは極めて難しいとされています。また、手の状態（乾燥や湿潤・荒れなど）に影響されにくく、安定した認証が可能です。

欠点

一方で、指紋認証に比べて認証機器の導入コストが高いというデメリットがあります。さらに、手袋や絆創膏を着用していると認証に失敗することが多く、指輪をしている場合や手が冷えていると、血流が減少して認証精度が低下することもあります。また、ビジネス上、この技術を提供する会社が主に日本企業に限られているため、国際的な知名度はあまり高くありません。

日本での利用例

日本では、多くの都市銀行や一部地方銀行、さらには新しい銀行モデルのATMなどで、静脈認証が導入されています。これにより、暗証番号と静脈の形を同時に読み取ることで本人確認が行われます。ただし、2020年代以降、多くの銀行で生体認証機能付きICキャッシュカードやATMサービスの終了が相次ぎ、スマホATMなどへの移行が進んでいます。

また、パーソナルコンピュータのログイン認証や、日本赤十字が献血者の確認に静脈認証を用いるなど、さまざまな分野での利用が進んでいます。さらに、住民基本台帳ネットワークシステムでの職員認証や、飲食店のポイントシステム、図書館での利用登録・資料の貸出など、用途は広がっています。

海外での利用例

海外でも静脈認証技術は採用されており、特にトルコでの医療体制革新プロジェクトなどが例として挙げられます。これにより、多国籍な環境でもこの技術の有用性が示されています。

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