非友好的な国と地域のリスト

ロシアの非友好国リストとは

ロシア政府が、自国に対して「非友好的な行動をとった」と見なす国や地域をリストアップしたものが「非友好国リスト」です。このリストに掲載された国や地域は、ロシアとの関係において特定の制限措置を受けることになります。以下に、その詳細を解説します。

リストの変遷

このリストは、当初2021年5月にアメリカ合衆国とチェコの2か国のみで構成されていました。しかし、2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻を契機に、ロシアに対して制裁措置を科した国や地域が次々とリストに追加され、2022年9月現在では48の国と地域にまで拡大しています。この中には、G7の全加盟国やEUの全加盟国（27か国）が含まれています。

リスト掲載の経緯

2018年6月、ロシアのプーチン大統領は、ロシアに対して非友好的な行動をとった国への対抗措置を可能とする法律に署名しました。この法律では、輸出入の制限や国際協力の停止、公共資産の民営化における非友好国企業の参加禁止などが対抗措置として挙げられていましたが、具体的な対象国は明示されていませんでした。当時、ロシアの国営メディアは、アメリカ合衆国がこの法律の対象となる可能性が高いと報じました。

2021年4月には、ロシア外務省が「非友好国リスト」を公開すると発表。当初の草案では最大10か国がリストアップされていましたが、最終的に公開されたリストにはアメリカ合衆国とチェコの2か国のみが掲載されました。この背景には、両国とロシアとの間で外交官の追放合戦やサイバー攻撃、選挙干渉などの問題が絡み、関係が非常に悪化していたことが挙げられます。特にチェコは、2014年に国内で発生した弾薬庫爆発事件にロシア情報機関が関与したとして、ロシア外交官を国外退去させていました。

2022年2月、ロシアがウクライナへの侵攻を開始すると、世界各国がロシアに対する経済制裁を発動しました。これに対し、ロシアは制裁措置を科した国や地域を次々と「非友好国リスト」に追加し、リストは大幅に拡大しました。2022年7月には、EUとは別にクロアチア、デンマーク、ギリシャ、スロバキア、スロベニアが個別に追加され、7月24日にはバハマ、ガーンジー島、マン島もリストに加えられました。同年10月にはイギリスの海外領土も追加され、2023年に入ってからもハンガリーやノルウェーがリストに加わっています。

非友好国リスト掲載国への制限措置

「非友好国」と見なされた国に対しては、さまざまな制限措置が課せられます。その法的根拠となっているのは、2018年6月に制定された対抗措置法です。

貿易・金融面の制限

2021年5月、アメリカ合衆国とチェコがリストに掲載された際、ロシアは両国の外交使節団が雇用できる現地職員の数を制限しました。アメリカ合衆国の公館では現地職員の雇用が禁止され、チェコ公館では19人までに制限されています。

2022年3月、ウクライナ侵攻に伴う制裁への報復として、ロシアは制裁を科した国々を非友好国リストに加えました。これにより、ロシア政府、企業、市民がリスト掲載国の債権者に対して抱える外貨建て債務を、一時的にロシアの通貨ルーブルで支払うことが可能になりました。ただし、その際にはロシアの銀行に特別口座を開設する必要があり、また、ロシア企業と非友好国リスト掲載国との間の新規取引は政府委員会の承認が必要となりました。

さらに、ロシアは非友好国への天然ガス輸出について、ルーブルでの支払いのみを受け入れると発表。これは、ロシアの大手銀行が国際銀行間通信協会（SWIFT）から排除されたことや、非友好国がロシア中央銀行の外貨建て資産を凍結したことへの対抗措置です。これにより、ロシアは外貨での支払いが困難になったため、ルーブルでの支払いを義務付けることで、ルーブルの需要と価値を高める狙いがありました。

ビザや外交面の制限

2022年4月には、ロシア政府は非友好国の国民に対するビザ制限を導入しました。これにより、ノルウェー、アイスランド、スイス、リヒテンシュタイン、およびEU加盟国との簡素化されたビザ協定が一部停止されました。また、ロシアに対して敵対行為を行う外国人や無国籍者には、個別の入国制限が課せられるようになりました。

2022年5月には、ネオンやヘリウムなどの不活性ガスの非友好国への輸出が禁止されました。これは、ロシアへの電子機器輸出禁止に対する報復措置でした。

2022年7月にクロアチア、デンマーク、ギリシャ、スロバキア、スロベニアがリストに追加された際には、在ロシアの各国の在外公館の職員数に制限が課されました。クロアチアとスロベニアの大使館は現地職員を雇用できなくなり、他の大使館も職員数に上限が設けられました。

2022年9月には、北方四島（ロシア名：南クリル諸島）の元島民とロシア人の間でビザなしで行われていた交流事業に関する合意が一方的に破棄されました。

まとめ

ロシアの「非友好国リスト」は、国際関係における複雑な駆け引きと、経済制裁、外交的な対立が絡み合って生まれたものです。このリストは、ロシアが自国の利益を守るために、国際社会に対して強い姿勢を示すための道具として使われていると言えるでしょう。今後、このリストがどのように変化し、国際情勢にどのような影響を与えるのか、注目する必要があります。

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