面影ラッキーホール

面影ラッキーホール (Only Love Hurts)

面影ラッキーホールは、日本のファンクバンド。現在はOnly Love Hurts（オーリー・ラブ・ハーツ）名義で活動しています。

概要

1曲ごとに物語が展開されるストーリーテリングの巧みさと、目を背けたくなるほどリアルな題材が特徴です。歌謡曲の遺産を受け継ぐキッチュなメロディラインと高度な演奏技術は、一部でカルト的な人気を集めています。

吉本隆明に「この人は上手すぎる程の物語詞の作り手だ」と評されたほか、道尾秀介、湯浅学、田口トモロヲ、大槻ケンヂ、町山智浩、宮藤官九郎、河原雅彦、森下くるみなど、音楽よりも文学・演劇方面からの評価が高いのが特徴です。

来歴

1992年、ボーカル/作詞のaCKy（アッキー）とベース/作編曲のsinner-yang（シナーヤン）を中心に結成されました。aCKyにとって、このバンドが初めて組んだバンドでした。1993年から「面影ラッキーホール」と名乗り始めます。バンド名は医療用ダッチワイフ「面影」と、1980年代の風俗を象徴する「ラッキーホール」を組み合わせたものです。初期の頃、aCKyは「面影」の製造元であるオリエント工業にコンタクトを取ろうとしましたが、反応はなかったそうです。

初期の音楽性は東京ロッカーズ〜東京ソイソースの流れを汲むアングラなものでしたが、激しいメンバーチェンジを経て、物語性の強い歌詞と演歌・歌謡曲からヒップホップ・ファンクまでをカットアップする独自のスタイルを確立しました。

1996年11月には、インディーズ・レーベルから初の音源『メロ』をリリース。ライブ会場限定の特典として、上野の中東系密売人から仕入れた偽造テレフォンカードが付属し、「買っても損しないアルバム」というキャッチフレーズが付けられました。ジャケットには、aCKyのアイデアで、1970年代劇画の巨匠・石井隆の絵が使用されています。石井隆本人に快諾を得たものの、表現者としての説諭を受けたそうです。このアルバムは朝日新聞の文化面で「真剣な社会批判か？ あるいは壮大な冗談か？」と評されました。

1997年にはソニー・ミュージックエンタテインメントと契約し、ファースト・アルバムを完成させますが、歌詞とジャケット（ケン月影のイラスト）の内容が「品位を欠く」としてリリースが見送られ、契約解除となります。その後、マスターテープとジャケットを譲り受け、一部改編を加えて1998年11月に徳間ジャパンコミュニケーションズから『代理母』として発売されました。しかし、発売直前に担当ディレクターが失踪するなど、困難なリリースとなりました。このアルバムは、2010年7月のミュージックマガジン「ゼロ年代アルバムベスト100 邦楽編」にも選出されています。

1999年12月にはアルバム『音楽ぎらい』をリリース。ジャケットには昭和の絵師・上村一夫のイラストが使用されました。上村の未亡人に使用許可を求めたところ、「あの音源を聴いてどんな怖い人達かと思ったら、丁寧で驚いた」と言われ快諾を得たそうです。また、「多くの方に生前の上村の劇画を誉めて頂くが、上村が生活の為に描いていた劇画には私は一切興味がなく、一度もまともに見た事がない。私にとっての上村はあくまで画家なのです」という言葉に感銘を受け、夫人が「唯一これだけは好きだった」というイラストをジャケット用に借り受けています。

2000年頃から、aCKyとsinner-yangのライブ嫌いや多忙、多趣味などが原因で、自主的なライブ活動を停止し、学園祭などのオファーがあった時のみの活動となります。ヴィンテージ・コレクトやインターネット上での出会い、ノワール小説への傾倒など、「バンドなんかより面白い事が多すぎて」活動が停滞しました。

2005年頃から徐々に活動を再開し、オリジナルメンバーのaCKyとsinner-yangに加え、sonech（キーボード）、中島カオリ（サックス）、田辺晋一（パーカッション）、西村哲也（ギター）、光永巌（ギター）、横銭ユージ（ドラムス）らが加わり、メンバーが固定します。

2006年7月、P-VINEレコーズに移籍し、7年ぶりのシングル『パチンコやってる間に産まれて間もない娘を車の中で死なせた…夏』をリリース。帯のキャッチコピーは野村義男のデビューアルバムからの引用で、ジャケットは新井英樹の書き下ろしです。

2007年4月には、当時まだ無名だったperfumeをオープニングアクトに起用するという前代未聞のライブを青山CAYで行い、話題となりました。同年7月にはフジロックフェスティバルに出演しています。

2008年8月、ライジングサンロックフェスティバルに出演。11月にリリースされたアルバム『Whydunit?』は、ミュージック・マガジンの年間ベストアルバムに選出されました。

2009年5月、テレビ東京系アニメ『夏のあらし!』の主題歌シングル「あたしだけにかけて」をキングレコードからリリース。PVには田代まさしが出演し、話題となりました。

2013年4月、「面影ラッキーホール」というバンド名を一般公募で改名することを発表し、Only Love Hurtsへ改名しました。

2015年1月には、彼らの曲をメインに構成した歌謡ファンク喜劇『いやおうなしに』が上演され、賛否両論を巻き起こしました。

2020年8月24日、sonechが死去。

メンバー

Vo: aCKy
B: Sinner-Yang
Key: sonech
Ds: 横銭ユージ
Per: 田辺晋一
Gt: 西村哲也
Gt: 光永巌
Cho: フミコ
T-Sax: 中島カオリ
Tb: SASUKE
Tp: 小澤篤士
A-sax: 岡村トモ子
Cho: まゆか

ディスコグラフィー

アルバム

メロ (1996)
代理母 (1998)
音楽ぎらい (1999)
Whydunit? (2008)
ティピカル・アフェア (2011)
on the border (2012)
グレイテスト・ヒッツ !! (2015)

シングル

パチンコやってる間に産まれて間もない娘を車の中で死なせた…夏 (2007)
あたしだけにかけて (2009)
愛のキサナドゥ〜地球防衛未亡人のテーマ〜 (2014)

DVD

面影ラッキーホールの流出!!!-マニア所蔵、お宝映像- (2006)

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