鞍馬天狗の「家」

鞍馬天狗の“家”：夢と家族の物語

1977年、テレビ朝日系列で放送されたスペシャルドラマ『鞍馬天狗の「家」』。この作品は、幼い頃から鞍馬天狗役で名高い嵐寛寿郎氏の主演映画製作を夢見る男、野崎信一とその家族の物語を描いています。

信一は、長年の夢を実現するため、勤めていた商社を辞職。小学生の娘・あかりと共に京都へと向かい、嵐寛寿郎氏への出演交渉を始めます。パチンコ店で偶然嵐寛寿郎氏を発見した信一は、その場で熱意を語りかけ、出演を承諾させます。

しかし、撮影は順風満帆とはいきません。嵐寛寿郎氏のマネージャーからは煙たがられ、信一の妻からは呆れられるなど、周囲の理解を得るのに苦労します。さらに、撮影中に嵐寛寿郎氏が負傷するアクシデントや、娘・あかりが東京へ帰ってしまうという困難に見舞われます。

困難の中、信一は自ら嵐寛寿郎氏の代役を務めたり、マネージャーの協力を得たりしながら撮影を続けました。そして、完成した映画を携え、入院中の嵐寛寿郎氏のもとを訪ねます。

完成した映画を鑑賞した嵐寛寿郎氏と信一。その時の心情、そして映画を通して生まれた家族の絆、夢の実現に向けた試行錯誤、それら全てが丁寧に描かれています。

見どころ

嵐寛寿郎氏と家族のリアルな姿： 嵐寛寿郎氏と妻が本人役で出演。嵐寛寿郎氏のモノローグも織り交ぜられ、人間味あふれる姿が印象的です。
家族の絆と夢への挑戦： 夢の実現に奮闘する信一の姿は、視聴者に共感と感動を与えます。家族の支えや葛藤が、物語に深みを与えています。
時代背景とドラマ性： 1970年代の社会情勢や、映画製作の裏側が垣間見える構成は、単なる娯楽作品を超えた魅力があります。
世代を超える感動： 嵐寛寿郎氏の鞍馬天狗を知っている世代はもちろん、知らない世代も楽しめる普遍的なテーマが作品に込められています。

スタッフと受賞歴

企画制作：山内久司、狛林利男、杉本宏、奥田哲雄
脚本：早坂暁
音楽：野口源次郎
演出：西村大介
制作・著作：朝日放送

この作品は、第26回日本民間放送連盟賞娯楽番組部門最優秀賞、第5回放送文化基金賞ドキュメンタリー番組部門奨励賞を受賞しています。

備考

当時、朝日放送はTBS系列からテレビ朝日系列へのネットチェンジ後、単発ドラマ制作の機会が減少していました。そのため、本作は朝日放送のドラマ制作力の健在さを示す象徴的な作品となりました。また、嵐寛寿郎氏にとって、劇中劇とはいえ、「鞍馬天狗」を演じた最後の作品となりました。

現在、横浜市の放送ライブラリーで視聴可能です。

『鞍馬天狗の「家」』は、夢と家族の愛、そして時代を超える感動を伝える、忘れ難い名作です。

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