鞏

春秋時代の諸侯国、鞏（きょう）

鞏は、中国の春秋時代に存在した諸侯国の一つです。その歴史は、地理的な位置と深く結びついており、周辺の強国との関係の中で興亡を繰り返しました。

鞏の位置

鞏の都城は、現在の河南省鄭州市鞏義市孝義街道の西約3キロメートルに位置する康店村一帯にありました。この遺跡は「鞏王城」と呼ばれています。地理的には、北に黄河、西に洛水が流れ、東には虎牢関、南には嵩山が控えるという天然の要害を成していました。この地形は、鞏が軍事的に重要な拠点であったことを示唆しています。

鞏の歴史

鞏は、周王朝の有力な家臣が領有する「周室卿采邑国」として成立しました。国の君主は「鞏伯」と呼ばれていました。しかし、春秋時代の動乱の中で、鞏は強国に翻弄されます。紀元前516年、強大化した晋によって滅亡しました。

滅亡後の鞏

晋によって滅ぼされた後、鞏の地は周王室に献上されました。これは、鞏が「周王畿の地」に属していたためです。

戦国時代に入ると、周王朝は東周と西周の二つに分裂しました。この混乱に乗じて、楚と趙が勢力を拡大します。東周公は、かつての鞏の都であった鞏王城を首都として東周国を立てました。しかし、東周国は実質的には韓の属国であり、紀元前247年に秦の呂不韋によって滅亡し、その短い歴史に幕を閉じました。その後、鞏の地は秦王政（後の始皇帝）によって三川郡に編入され、秦の支配下に入りました。

史書における記述

『世本』氏姓篇には、「鞏氏、周王族大夫食采于鞏為氏、有簡公」と記されています。これは、鞏という姓が、周王室の大夫が鞏を領地としたことに由来し、簡公という君主がいたことを示しています。

また、『春秋左氏伝』昭公二十六年（紀元前516年）には、「晋師克鞏」と記されており、晋が鞏を滅ぼした事実が記録されています。

鞏の君主

鞏の君主として確認されているのは、簡公のみです。

まとめ

鞏は、春秋時代に短期間存在した諸侯国でありながら、その地理的な重要性から歴史の舞台に登場しました。周王朝から晋、そして秦へと支配者が移り変わる中で、その姿を変えていきました。特に、東周国の首都となったことは、その歴史を語る上で重要な点です。鞏の興亡は、春秋戦国時代の激しい動乱を象徴する出来事の一つと言えるでしょう。

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