鞠子宿

鞠子宿の魅力

鞠子宿（まりこしゅく）は、東海道五十三次の第20番目の宿場町です。静岡県静岡市駿河区に位置し、その最寄り駅は東海道線の安倍川駅です。歴史的には、慶長6年（1601年）に東海道伝馬制のもと宿場町としての役割を果たし始めました。その規模は非常に小さく、天保14年（1843年）の記録によれば、家屋数は211軒、旅籠は24軒であったことが知られています。

名物料理と文化

鞠子宿の名物はなんといってもとろろ汁です。松尾芭蕉はその味を称え、「梅若葉丸子の宿のとろろ汁」という句を残しています。また、十返舎一九の著作『東海道中膝栗毛』にもこの名物が登場し、より多くの人々に親しまれることとなりました。

さらに、鞠子宿の近隣には、岡部宿との境に位置する宇津ノ谷の昔ながらの街並みや、源氏や今川氏、徳川氏にゆかりのある史跡が点在しています。安倍川の丸子橋付近には、宿場町の歴史を伝える高札場の跡があり、そこに立つ高札のレプリカが当時の面影を感じさせます。

また、歌川広重の浮世絵によって鞠子宿は一層注目されました。この浮世絵は、クロード・モネの「積みわら」にも影響を与えたとされる重要な作品です。

丁子屋の歴史

鞠子宿には、丁子屋（ちょうじや）という有名なとろろ汁を提供する店があります。静岡市駿河区の丸子七丁目に位置し、戦国時代末の1596年に創業し、現在まで約427年もの長い間営業を続けています。当初はお茶屋としてスタートし、宿泊所をも兼ねていたと言われています。「丁子」とは、当時貴重であった香辛料のクローブを指します。

丁子屋は本陣跡から徒歩3分のところにあり、名物のとろろ汁だけでなく、御膳料理も楽しむことができます。歌川広重が描いたとされる名物茶屋は多くの場合丁子屋だと認識されていますが、実際にはとろろ汁を提供する茶店は他にも存在しており、広重の作品がどの茶屋を描いているか明確な証拠はありません。

丁子屋の茅葺きの建物は、1970年に法人化された際、12代目当主の柴山信夫によって五十三次の宿場に似せた作りに改装されています。これは、当時の農村の姿から丁子屋を観光地として再生するための努力の一環として行われました。柴山はまた、20年間にわたり4,000万円をかけて『東海道五十三次』の版画を収集し、地域の魅力を高める活動にも力を尽くしました。現在も、彼が収集した版画は丁子屋の所蔵品として大切に保存されています。

日本遺産としての認定

2020年6月19日には、丁子屋ととろろ汁が文化庁の「日本遺産」に認定され、東海道の旅の魅力や文化的価値を引き立てています。この認定は、鞠子宿が持つ歴史的背景に価値を与えるものとなっています。

隣接する宿場には府中宿と岡部宿があり、鞠子宿はその中でも特に訪れる価値のあるスポットです。これらの要素が重なり合って、鞠子宿は美しい景観と深い文化的背景を持つ、訪れる人々に多くの感動を与える場所となっています。

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