高札

高札（こうさつ・たかふだ）についての詳細

高札とは、古代から明治時代の初めにかけて用いられた法令や通達を民衆に広く知らせるための掲示手段です。この方法は、特に木製の板に法令の内容を墨で記し、人々が往来する場所に掲げることによって行われました。高札には、一般法や基本法を広めるためのものがあり、特定の相手や事柄を対象とする特別法を記載した制札（せいさつ）も含まれることがあります。

歴史的背景

高札の起源については明確には分かっていませんが、延暦元年（782年）に太政官が官符を広めるために掲示する指示を出しており、これが高札の起こりとされています。その後、鎌倉時代や室町時代の武士政権によっても用いられ、特に江戸幕府が成立した後、全国的に利用されるようになります。

江戸時代においては、高札が全国的な制度として確立され、幕府や諸藩によって広く普及しました。高札は大きく二種類に分けられ、基本的な法令を広めるためのものと、特定地域に特定の目的で掲げられるものです。

高札の内容と役割

高札には、法令の内容、発行年月日、発行主体などが記載されており、人々の目を引く容易な位置に置かれたことで、広く民衆に周知されることが目的とされていました。江戸時代の高札制度には、民衆に道徳的・倫理的な行動を促すこと、新たな法令を周知させること、法の趣旨を明確にすること、遵法精神を養うこと、民衆からの通報を促進することなどが挙げられます。特に、1649年には「慶安御触書」があり、農民の生活や倫理について詳しく規定された重要な文書の一つです。

高札場（制札場）

高札は、特に人々が行き交う場所や交通の要所に設けられた「高札場」に掲示されました。これらの高札場は、江戸を含む全国に存在し、目立つ地点に設置されることで、人々の目に留まりやすくなっていました。代表的な高札場には、江戸の日本橋や京都の三条大橋などがあります。また、高札が風雨に晒されて文字が見えにくくなることもあるため、「高札番」と呼ばれる役職の人が高札場の管理を行いました。

明治期の廃止

明治維新により新政府が主導した法律・制度改革の中で、1866年には高札が廃止されることが決まりました。公式には「庶民への周知徹底が図られた」とされますが、実際には新しい法制度の導入や財政難、さらには新しい情報伝達手段の出現が背景にあったとされています。高札は、庶民への法律の周知を目的としていたものの、時代の流れと共にその役割を終えることとなりました。

高札は日本の歴史において重要な役割を果たした制度であり、当時の政治や法のアプローチを知るうえでも欠かせない存在でした。

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