韓国のビール

韓国のビール：歴史、ブランド、そして市場動向

韓国でビールは「メクチュ（맥주）」と呼ばれ、20世紀初頭に導入された。1908年にはソウルで最初のビール醸造所が開業し、1920年代にはハイトビール（旧朝鮮麦酒）とOBビール（旧東洋麦酒）の礎となる醸造所が設立された。ハイトビールは1993年に「ハイト」を発売し市場を席巻、OBビールは1995年に社名変更後、Cassブランドで人気を博した。かつては韓国ビール市場のほぼ全てをこの2社が寡占していた。

主要ブランドと特徴

ハイト眞露は、ハイトビールと眞露の合併により誕生。主力ブランド「Hite」は、軽快な味わいのラガービールとして知られる。他に、モルトビールの「Max」、ドライタイプの「Dry D」、低カロリーの「S」、黒ビールの「Stout」など、多様なラインアップを展開している。

OBビールは、「Cass」シリーズ（Cass Fresh, Cass Lightなど）で知られる。Cassは爽快な後味が特徴で、韓国のビール市場を長年リードしてきた。また、「OB Golden Lager」は、全麦芽を使用した高品質なラガービールとして人気が高い。この他、Cafri、Alestonといったブランドも展開している。

近年では、ロッテ七星飲料の「Kloud」など、新たなブランドも市場に参入し、競争が激化している。また、韓国では、政府規制の緩和に伴い、クラフトビール醸造所も増加傾向にあり、個性豊かなビールを提供するブランドが注目を集めている。代表的なクラフトビール醸造所としては、Korea Craft Brewery、7Bräuなどがある。

市場動向と課題

韓国のビール市場は、長らくラガービールが主流であった。しかし、2011年のEUとの自由貿易協定発効を機に輸入ビールの流入が増加。消費者の嗜好が多様化し、エールやスタウトなど、多様なビールへの需要が高まっている。

一方、韓国のビールメーカーは、麦芽のコスト高騰を背景に、トウモロコシや米などの副原料を使用することが多い。そのため、一部からは「麦芽の使用率が低い」という批判もある。しかし、メーカー側は、これらの原料がコスト削減だけでなく、軽快な味わいを生み出す上で有効だと主張している。

近年は、韓国のビール消費において、輸入ビールのシェアが拡大している。特に、日本産ビールは、かつて韓国市場で高い人気を誇っていたが、2019年以降は日韓関係の悪化による不買運動の影響を受け、輸入量が大幅に減少した。しかし、近年の関係改善により、回復の兆しを見せている。

マイクロブルワリーとビール文化

韓国のマイクロブルワリーは、政府規制の緩和を受けて増加しつつある。これらの醸造所は、多様なスタイルのクラフトビールを提供することで、韓国のビール文化に新たな風を吹き込んでいる。

また、韓国では、「チメク」（チキンとビール）といった独自のビール文化も根強い。近年は、一人暮らし世帯の増加に伴い、家庭でビールを楽しむ人も増えている。

まとめ

韓国のビール市場は、長らくOBビールとハイト眞露の寡占状態にあったが、近年はクラフトビールの台頭、輸入ビールの増加、消費者の嗜好変化など、様々な要因によって大きく変貌しつつある。今後、韓国のビール市場は、多様なブランドやスタイルが競争を繰り広げ、ますます活気づくことが予想される。

もう一度検索