音声多重放送

音声多重放送の概要

音声多重放送（おんせいたじゅうほうそう）とは、ひとつの放送チャンネルで複数の音声を同時に送り届ける技術のことです。この放送方式は、視聴者に複数の言語オプションや解説を選択的に提供するために利用されます。特に、ニュースや映画の放送時に日本語と外国語の音声を同時に流すことで、視聴者が選択した言語で楽しむことができます。

日本における音声多重放送の歴史

音声多重放送の開発は1962年に始まりました。NHKと民放6社が共同で実験局設立を申請し、1964年には「テレビ音声多重実験協議会」が設立されます。東京オリンピックに向けて、技術的な実験が行われましたが、実際の放送サービスには結びつきませんでした。

その後、1970年の日本万国博覧会に向けて、実験的な2か国語放送やステレオ放送が開始されることになりました。1968年にはNHK技研が室内実験を再開し、1969年からは既存の放送設備を用いて実験が進められました。1970年には、FM-FM方式が優れた音声多重方式として採用され、実験放送が行われました。

実用化試験放送の開始

1978年、音声多重放送の実用化試験放送が開始され、東京・大阪のNHK総合テレビに加え、民放各社も参加しました。同年9月には日本テレビが特別コーナーを設け、音声多重放送の開始を告げる特番を放送しました。これに続いて、全国の民放局が音声多重放送を実施するようになりました。

1979年には、日本テレビが開票速報番組において、日本初の公式な音声多重放送を行い、これが後に放送法違反とされました。しかし、政府の許可を得て再び音声多重放送が認められ、1980年には全ての音声多重放送局に対する免許方針が策定されました。

本放送開始

1982年12月1日、音声多重放送は正式に本放送として免許され、実用化試験局が本放送に移行しました。この際、複数の放送局が順次免許を切り替え、音声多重放送の本格的な実施が始まりました。これに伴い、視聴者には、スピーチの異なる言語や解説を選択できるオプションが与えられました。

技術的な仕組み

音声多重放送は、主音声と副音声として構成され、主音声は多くの場合日本語で、もう一方の副音声には外国語や解説が用いられます。これにより、視聴者は自身の好みに応じた音声を選択して、より分かりやすい放送を楽しむことができます。

アナログ放送では、FM-FM方式が用いられ、音声は搬送波を通じて送信されます。ステレオ放送の場合、主音声用チャンネルには往年の音声が混合され、副音声用チャンネルには差分音声が載せられ、ステレオ非対応の受信機でも視聴が可能です。

デジタル化と現代

地上デジタル放送では、複数の音声を同時に伝送する能力が向上し、各チャンネルで最大8音声の多重化が可能です。デジタル放送では、視聴者が容易に主音声と副音声間を切り替えることができ、より柔軟な放送環境が整備されています。このような発展により、高齢者向けの音声サービスなど、新しいサービス形態も登場しています。

音声多重放送は、視聴者のニーズに応える重要な技術となっており、今後のさらなる発展が期待されます。

もう一度検索