ステレオ放送

ステレオ放送の概要

ステレオ放送（ステレオほうそう）は、音を左右の2つのチャンネルで伝送する音声多重放送の一種です。この技術により、リスナーはより立体的で臨場感のある音声体験を得ることができます。また、音声チャンネルをさらに多様化したマルチサラウンドステレオ放送も存在します。ステレオ放送は、日本のテレビ番組表では「S」「ス」「立」などの記号で示されます。

日本におけるテレビのステレオ放送の歴史

日本では、地上波アナログ放送が初めてステレオ放送を行ったのは1970年で、NHK総合テレビが東京地区で実験放送を開始しました。初めてのステレオ放送は『NHKコンサートホール』という番組で行われました。その後、いくつかの試験的な放送がありましたが、テレビ番組の全面カラー化が優先され、これが一時中断されました。

1978年には再び実用化の試みが行われ、日本テレビが初めてステレオ放送の免許を取得し、10月28日の『ミセス&ミセス』で放送を開始しました。同日に「巨人対広島」戦のプロ野球中継もステレオ化されました。この時期から、ステレオ放送は徐々にレギュラー番組でも採用されていきました。初期の段階では音楽番組やスポーツ中継が多く、番組内で数回「ステレオ放送」とのテロップが表示されていました。

その後、衛星放送においてもステレオ化が進み、ドラマなどでもテロップ表示の回数が減少しました。1994年以降は、NHKもテロップの表示を廃止し、制作体制も進化を遂げていきました。

ステレオ放送の特徴と技術

初期のステレオ放送では、スタジオ内音声はモノラルで収録され、BGMや効果音のみがステレオで放送されることが多くありました。このような収録方法は「モノステレオ放送」と呼ばれ、観客の拍手やリアクションなどはモノラル音源として処理されました。これにより、視聴者は中継の実際の空間を感じながら楽しむことができたのです。

地上デジタル放送への移行後、2011年に地上アナログ放送が終了し、テレビ番組の多くがモノステレオ放送となりました。日本テレビ系列は、全番組をステレオ放送化することを宣言し、フジテレビも生放送の報道番組以外をステレオに切り替えました。このように、デジタル放送においては音声信号が主にステレオであり、安定した放送環境を提供しています。

日本のラジオ放送とステレオ展開

ステレオ放送は主にテレビでの利用が中心ですが、ラジオにおいても超短波放送を通じて実施されてきました。ただし、AMステレオ放送やデジタルラジオの普及はそれほど進展せず、多くのリスナーは従来のモノラル放送を利用している現状です。

まとめ

ステレオ放送は、音声を2つのチャンネルで伝えることにより、視聴者に豊かな音響体験をもたらしています。日本においてもその歴史は古く、技術や内容の進化とともに多様な放送形態が発展してきました。この技術は、今後もますます重要となるでしょう。

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