音響外傷

音響外傷（おんきょうがいしょう）について

音響外傷とは、強い音波によって内耳の蝸牛が損傷し、聴覚が障害される状態のことを指します。一般的には、難聴や耳鳴りといった症状が現れます。この病態は、音響性聴器障害とも呼ばれ、聴力の低下が見られる場合、特に正常な聴力と比較して21dB以上の閾値が回復しない状態を指します。診断は、1kHzや4kHzを用いた選別聴力検査（オージオメーター）によって行われますが、近年では剣道などの競技者に見られる難聴は、外傷による直接的な影響ではなく、むしろ中枢神経の損傷が原因と考えられています。

分類

音響外傷は、音に曝露する時間の長さによって、狭義の音響外傷と広義の音響外傷の2つに分類されます。

1. 狭義の音響外傷: 瞬間的または非常に短期間の音に曝露されることで発生します。例えば、爆発音や銃声、エアバッグの音などが130dB(A)以上の音圧を伴い、その結果、聴覚が一時的に障害されることがあります。
2. 広義の音響外傷: コンサートやディスコ、ヘッドフォンなどによって、数分から数時間にわたり80dB(A)から120dB(A)の高い音に長く曝露され続けることによって引き起こされます。

音響外傷の代表的な症状には、耳鳴りや聴力の低下、場合によってはめまいやふらつき感があります。

音の生体への影響

音響外傷は単なる聴力の問題ではなく、音の生体への影響も無視できません。近年の研究では、騒音環境での長期的な曝露が健康にどのような影響を及ぼすかが注目されています。産業医学の専門誌では、音による影響に関する最新の知見が紹介されています。

予防

音響外傷を防ぐためには、騒音が多い環境で作業する場合や長時間滞在する際には、耳栓やイヤーマフといった聴力保護具を使用することが重要です。これにより、音から得られるダメージを最小限に抑えることが期待できます。

治療

現在のところ、音響外傷に対して確立された治療法はありませんが、軽度の急性音響性聴器障害においては、投薬治療が有効な場合もあります。具体的には、突発性難聴の治療法と似たように、ステロイド系抗炎症薬やビタミン剤、さらには代謝促進剤の投与が行われます。しかしながら、治療効果には個人差があり、元の聴力に回復できない場合も多いです。動物実験においては、軽度の障害には効果が確認されたものの、重度の音響外傷には効果がないとされることが分かっています。

特に狭義の音響外傷では、曝露音圧が115dBSPLを超えると、内耳に機械的な障害が生じる可能性が高く、こうした場合には薬物治療による改善は期待できません。

関連項目

音響外傷に関連するトピックには、音圧レベルや鐙骨筋の機能、アコースティック・ショックによる聴覚障害などがあります。これらは音響外傷の理解を深めるための重要な要素です。予防や治療法についての詳細な情報は、職場の安全サイトや医学専門誌に記載されていることが多いです。

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