須川栄三

須川栄三（すがわ えいぞう）

須川栄三は、日本の映画界でひときわ異彩を放った監督・脚本家です。1930年の大阪で生まれ、1953年に東京大学経済学部を卒業した後、東宝に入社。映画への情熱は、戦後間もない頃に多くの外国映画を観たことに起因しています。

映画界における須川のキャリアは、助監督として始まりました。彼が執筆したシナリオ『危険な英雄たち』は、1957年に鈴木英夫監督によって映画化され、須川はシナリオと助監督の両方で認知されることに成功しました。1958年には岡本喜八とともに監督に昇進し、27歳という若さでデビューを果たしました。彼の初監督作品『青春白書 大人には分らない』は、以後の彼の映画制作における独自のスタイルを確立する重要な作品となりました。

初期の代表作『野獣死すべし』は、若いスタッフとともに制作され、クールなピカレスク・ロマンとして高く評価されました。しかし、主人公の完全犯罪が結果的に倫理的な問題を引き起こし、映倫に修正を求められるなど、物議を醸しました。須川は、日本映画において洗練されたハードボイルド的なアプローチを持つ作品を得意としつつ、1964年には本格ミュージカル映画『君も出世ができる』を監督し、映画のジャンルを広げる試みを行いました。

その後も、松本清張原作の『けものみち』や、植木等主演の「日本一シリーズ」など、多くの作品を手掛けました。特に、戦後の社会状況を反映したブラック・コメディ作品も手がけ、観客に新鮮な衝撃を与えました。須川は1976年に東宝を退社し、独立プロダクションを設立後も精力的に活動を続け、1987年には映画『蛍川』を制作しました。晩年には、山田太一原作の『飛ぶ夢をしばらく見ない』が遺作となり、映画界を引退しました。

また、須川はテレビ[[ドラマ]]の分野でも評価を受け、1963年にはNHKのドラマ『鋳型』で文化庁芸術祭賞を受賞。彼の脚本は多くの視聴者に深く刻まれ、視聴率を獲得することが多かったです。私生活においても独特で、1969年には女優の真理明美と愛の契約書を交わして結婚しました。やはり映画作りにおいて妥協を許さない姿勢を持ち続け、多くの原作者との衝突も経験しました。

映画監督としての彼の最大の功績は、異なるジャンルに挑戦し、日本映画の枠を広げることであり、その作品は今なお多くの人々に影響を与え続けています。彼の人生と作品は、日本映画の豊かな歴史と多様性を象徴するものとして、映画史に名を刻んでいます。

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