頼声川

頼声川（スタン・ライ、LAI Shengchuan、英語名：Stan LAI、1954年10月25日生まれ）は、台湾を代表する劇作家、演出家、映画監督、テレビディレクター、そして演劇学者です。アメリカ・ワシントンD.C.で外交官の息子として生まれ、少年期に台湾へ帰国しました。輔仁大学を卒業後、カリフォルニア大学バークレー校で演劇学の博士号を取得。1982年に国立芸術学院（現在の国立台北芸術大学）創立時に教員として招聘され、2012年頃まで戯劇系・戯劇学院で教鞭をとりました。

1984年には、自ら表演工作坊（Performance Workshop）を設立しました。彼の演劇制作の特徴は、俳優たちによる即興演技を基に作品を創り上げていく集団即興創作という手法です。稽古中に生まれた即興的なアイデアを、頼声川が整理・文章化することで、完成度の高い劇文学作品として昇華させています。そのため、表演工作坊の作品は、集団創作でありながら、実質的には頼声川の作品とみなされています。彼の作品は、緻密な構成と深いテーマ性を持ち合わせており、観客に強い印象を与えます。

代表的な演劇作品には、『あの夜、私たちは漫才をやった』（1984年）、『暗恋桃花源』（1986年）、『赤い空』（1994年）、そして『夢のような夢』（2000年）など、30を超える作品があります。映画作品としては、自身の戯曲を映画化した『暗恋桃花源』（1992年）が知られており、東京国際映画祭で東京シルバー賞を受賞しました。また、テレビドラマの制作にも携わるなど、多岐にわたる分野で活躍しています。

頼声川の作品の特徴として、登場人物が自己のルーツを探求する際に、1949年以前の中国大陸を背景とする点が挙げられます。これは、台湾の演劇や文学において、ルーツ探しが過去の台湾（特に日本統治時代）を舞台とすることが多いのと対照的です。この独自の視点が、21世紀の現在では、中国大陸においても広く受け入れられており、彼の作品はしばしば中国大陸でも上演されています。彼の作品は、台湾の文化と歴史を背景に持ちながら、普遍的なテーマを扱い、観客に深い感動と共感を与えています。

彼の功績は、台湾演劇界の発展に大きく貢献しただけでなく、中国語圏における演劇の可能性を広げたことにもあります。頼声川の作品は、これからも多くの人々に愛され、演劇史にその名を刻み続けるでしょう。

参考文献:
瀬戸宏『中国の現代演劇　中国話劇史概況』付章「台湾と香港・マカオの話劇」（東方書店　2018年）
飯塚容「頼声川の『相声劇』について－究極の『語る』演劇」（中央大学人文科学研究所編『現代中国文化の光芒』中央大学出版部　2010年）

外部リンク:
* 表演工作坊公式サイト

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