額田大中彦皇子

額田大中彦皇子の生涯と業績

額田大中彦皇子（ぬかた の おおなかつひこ の みこ）は、古墳時代に属する皇族で、応神天皇の皇子として知られています。彼の母は高城入姫命で、同母兄弟には大山守皇子、去来真稚皇子、大原皇女、澇来田皇女がいます。また、仁徳天皇や菟道稚郎子の異母兄でもあります。

淤宇宿禰との皇位争議

『日本書紀』の第十一巻には、菟道稚郎子と大鷦鷯尊（後の仁徳天皇）との間で皇位を巡る譲り合いが描かれています。この時、淤宇宿禰は菟道稚郎子に争議を訴えましたが、すぐに大鷦鷯尊にも同様の訴えを行いました。大鷦鷯尊は、倭直の祖先である麻呂に相談し、その結果、麻呂の弟の吾子籠に問いかけることにしました。しかし、吾子籠は韓国に派遣中だったため、急いで彼を呼び戻すことが求められました。

吾子籠は帰国後、事情を説明し、大鷦鷯尊はその情報を額田大中彦皇子に伝えるよう指示しました。この事件は、後に菟道稚郎子との皇位抗争へと繋がっていきます。

氷室の発見

額田大中彦皇子の次の登場は、仁徳天皇が即位した後のことです。当時、皇子は闘鶏稲置大山主を呼び出し、氷を貯蔵するための洞窟について尋ねました。「氷室」と名付けられたこの場所で、皇子はその用途を聞くと、何層にも積まれた素材の上に氷を置く方法で、夏を越えても氷が失われず、飲み物に使うために利用されていたことが明かされました。この発見に喜んだ仁徳天皇は、以後冬の季節には必ず氷を貯蔵し、春分の日に初めて氷を配ることを行いました。

この氷室は、『延喜式』の「主水式」においても記載されており、奈良県天理市福住町に位置しています。氷の供物は年に一度、4月1日から9月30日まで行われました。

考察

八木充の研究によると、出雲地方では祭祀の対象となる神々が異なることが示されています。特に、西部では大国主神が、東部では素戔嗚尊が祀られています。この地域の氏族構成や出雲国の文化的背景から、出雲臣が大和地域に進出し、両地域の王権と深く関与していた可能性が考察されています。

岡田山古墳からは「額田部臣氏」と見られる鉄刀が発見され、この一族は『風土記』によると大原郡少領を歴任します。

一方で、『日本書紀』の記述には、額田大中彦皇子と大山守皇子を取り違えていると見られる箇所があるものの、彼らは前述の通り血のつながりの深い兄弟です。また『書紀』の表現には、仁徳天皇の時代とは考えにくい表現が含まれており、そのことが研究者によって指摘されています。

結論

額田大中彦皇子の生涯は、古墳時代の日本における皇族の複雑な人間関係や文化的な背景を理解する上で重要です。彼にまつわる出来事や氷室の発見、そして出雲地方との繋がりは、当時の社会構造や信仰を映し出す貴重な情報源となっています。

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