額縁の中の少女

『額縁の中の少女』：レンブラントの驚異的な技巧と謎めいた魅力

17世紀オランダ黄金時代の巨匠、レンブラント・ファン・レイン。彼の油彩作品『額縁の中の少女』（1641年）は、その卓越した技巧と謎めいた魅力で、美術史に燦然と輝く1枚です。別名『ユダヤ人の花嫁』や『帽子をかぶった少女』とも呼ばれるこの作品は、トロンプ・ルイユ（騙し絵）という技法を用いており、まるで少女が額縁から飛び出してくるかのような錯覚を鑑賞者に与えます。

絵画の描写と技法

少女は、黒い額縁に囲まれた、濃い赤のベルベットのドレスと黒い帽子を身につけ、真珠のイヤリングを揺らしています。彼女の両手は額縁の上に置かれ、指先は額縁の外に伸びているため、絵画と現実の境界が曖昧になり、少女が今にも動き出しそうな生々しさを醸し出しています。磨かれた黒い額縁は画面下部と右端にのみ描かれ、少女の肌色の間接光が額縁を照らす繊細な描写も特徴です。衣装は当時の流行とは異なり、神話や歴史、聖書の主題を連想させる古代風の衣装となっています。レンブラントは、油彩画やエッチングにおいて、こうした古代風の衣装をまとった人物を頻繁に描いています。

制作過程と下絵

この作品は、肖像画ではなく、トローニー（小品）あるいは習作と見なされています。レンブラントは当初、別の絵画を描こうとしていました。それは、当時の流行に沿ったドレスと襞襟、小さなボンネットを被った女性の姿を描いた肖像画でした。しかし、この作品は未完成に終わり、その板絵が再利用されて『額縁の中の少女』が制作されたと考えられています。顧客からの依頼による肖像画制作において、既存の板絵を再利用した例は知られていません。

修復とX線分析

2005年から2006年にかけて、ワルシャワ王宮で修復が行われました。後世に施された上塗りは、可能な限り除去され、X線分析によって、元の構図の痕跡が発見されました。修復によって、上塗りが除去された胸部と右袖の部分では、レンブラントの卓越した筆遣いが鮮やかに蘇っています。

解釈と対作品

この作品は、少なくとも1769年以来「ユダヤ人の花嫁」として知られていました。1711年以降、『書見台の学者』との対作品と見なされ、旧約聖書の登場人物であるエステルとモルデカイをそれぞれ表しているという解釈もありました。しかし、美術史家の中には、対作品とは考えていない者もいます。

エルンスト・ファン・デ・ウェテリングは、この作品は、レンブラントが騙し絵の構図や動きの表現に強い関心を持っていたことを示す典型的な例であり、レンブラントのこうした試みは短命に終わったものの、重要なプロトタイプと言える、と主張しています。レンブラントは少女の右腕をわずかに引っ込ませ、右手を額縁の外に置くことで、動きの錯覚を巧みに演出しています。

来歴とレンブラント帰属

本作品に関する最初の記録は1711年の目録です。その後、幾多の所有者を経て、1994年にカロリーナ・ランコロンスキ伯爵女史によってワルシャワ王宮に寄贈されました。レンブラント研究プロジェクトのリーダー、エルンスト・ファン・デ・ウェテリングによる綿密な分析の結果、2006年にレンブラントの作品として正式に認定されました。

結論

『額縁の中の少女』は、レンブラントの天才的な技巧と創造性を余すことなく示す傑作です。少女の生々しい存在感、繊細な描写、そして謎めいた魅力は、今もなお多くの人々を魅了し続けています。この作品は、レンブラントの芸術に対する飽くなき探求と革新性を示す、貴重な証なのです。

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