モルデカイ

モルデカイは、旧約聖書のエステル記に登場する、ユダヤ人の英雄的な人物です。彼の名前はヘブライ語で「מָרְדֳּכַי」と表記され、ラテン文字転写ではMordecaiまたはMordechaiと記されます。彼は、バビロン捕囚から帰還したユダヤ人の一人であり、ベニヤミン族に属していました。

モルデカイの物語は、エステル記において重要な位置を占めています。彼は、いとこであるエステルを養女として育て、彼女がクセルクセス王の王妃となるのを支えました。エステルが王妃となった後も、モルデカイは彼女の安全を気遣い、王宮の前を行き来していました。ある時、モルデカイは王の暗殺計画を察知し、エステルを通して王に報告しました。この功績は王宮の記録に記されましたが、当時は報奨が与えられませんでした。

その後、アハシュエロス王はハマンという人物を重用し、彼に敬意を払うよう命じましたが、モルデカイはユダヤ人としてハマンに敬礼することを拒否しました。これに激怒したハマンは、ユダヤ民族全体を滅ぼそうと企てます。モルデカイはこれを知り、深く嘆き悲しみ、いとこのエステルに、王に訴えてユダヤ人を救うよう懇願しました。エステルは当初、危険を恐れて躊躇しましたが、モルデカイの強い説得によって決意を固めました。

王宮日誌を読んだ王は、モルデカイが過去に王の命を救った功績に気づき、その報奨として彼を称えることを決めます。ハマンは王に、自分が栄誉を受けるものと勘違いし、モルデカイを最も栄誉ある仕方で称えるよう提案しました。皮肉なことに、ハマンが提案した通りにモルデカイは称えられました。

その後の宴席で、エステルはハマンの悪事を王に暴露しました。ハマンはモルデカイを処刑するために用意していた杭に自らかけられ処刑されました。モルデカイはハマンに代わって王の宰相となり、ユダヤ人を滅亡から救いました。王はモルデカイにユダヤ人が自衛する権利を与え、ユダヤ人は敵に勝利することができました。モルデカイは、この勝利を記念してプリムという祝祭を制定し、ユダヤ人の間で永く祝われるようになりました。

モルデカイは、その勇気、知恵、そして民族への深い愛によって、ユダヤの歴史において重要な人物とされています。彼の物語は、困難な状況においても正義を貫き、神の導きに従うことの重要性を教えてくれます。モルデカイの生涯は、エステル記を通して、私たちに語り継がれており、その遺産は現代にも息づいています。彼の行動は、希望と勇気の象徴として、今もなお多くの人々に影響を与え続けています。

関連事項：
エステル記
プリム祭

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