顔 (松本清張)

短編集『顔』について

『顔』は松本清張が1956年に発表した短編集で、彼の初めての推理小説として位置付けられ、1957年には日本探偵作家クラブ賞を受賞しました。この短編集は日本のミステリー文学において重要な一冊となっています。

収録作品

本作には以下の短編が収められています。
1. 顔（初出：『小説新潮』1956年8月号）
2. 殺意（初出：『小説新潮』1956年4月号）
3. なぜ「星図」が開いていたか（初出：『週刊新潮』1956年8月）
4. 反射（初出：『小説新潮』1956年10月号）
5. 市長死す（初出：『別冊小説新潮』1956年10月号）
6. 張込み（初出：『小説新潮』1955年12月号）

『顔』のあらすじ

表題作『顔』では、東京の劇団に所属する俳優・井野良吉が映画の出演話を持ちかけられます。しかし、彼には顔が広まることを恐れる理由がありました。それは、9年前に彼が妊娠したガールフレンドの山田ミヤ子を殺してしまったからです。彼はその際、ミヤ子の知人である石岡貞三郎に顔を見られてしまったのです。

良吉は貞三郎の動向を9年にわたり監視し、彼を京都に呼び出す計画を立てます。彼はミヤ子の親戚を装い、貞三郎に面通しを行いたいと申し出ます。しかし出会った際、貞三郎は良吉の顔を覚えておらず、計画は成功したかに思えました。しかし、映画が公開された後、貞三郎は映像の中の良吉を見て、かつての記憶を呼び覚ますのです。

登場人物

• - 井野良吉：主役の俳優。暗い過去を持つ。
• - 石岡貞三郎：ミヤ子の知人。良吉の初犯を目撃した。
• - 山田ミヤ子：良吉の元ガールフレンド。
• - 田村：事件を追う刑事。

評価

本作は推理小説として高く評価され、松本清張の名を確立しました。日本探偵作家クラブの会長もその素晴らしさを称賛し、全会一致で受賞が決定したことでこの短編の重要性がうかがえます。著者自身がこの作品について、出世と運に関わる深いテーマを持たせたとも言われ、書籍の題名『顔』には二つの意味が込められています。試練を乗り越えてこそ得られる運の良さを象徴した作品なのです。

映像化

『顔』は多くの映画やテレビドラマとしてもリメイクされ、その都度新たな視点で物語が展開されています。特に初の映画化作品は1957年に公開され、多くの観客から支持を受けました。後に連続ドラマや特別企画としても放送され、現代に至るまで多くのスタッフやキャストにより再解釈されています。

本作『顔』は、松本清張が描く人間の暗い側面や、その影響によって人生がどのように変わっていくのかを見事に表現しています。買い求める価値のある一冊として、多くの読者にぜひ手に取っていただきたいものです。

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