顔恵民

顔恵民（がん けいみん）

顔恵民（1928年 - 1985年）は、台湾出身の実業家であり、一青妙、一青窈の父として知られています。彼は、台湾の五大財閥の一つである顔一族の長男として、激動の時代を生きました。

生い立ちと教育

1928年、顔恵民は日本統治下の台湾で生まれました。彼の父は、九份の金鉱経営で成功した顔欽賢であり、顔家は台湾有数の財閥として名を馳せていました。顔恵民は、幼少期を台湾で過ごした後、10歳の時に母親と共に日本へ渡り、日本の教育制度の中で育ちました。

彼は、東京都千代田区立番町小学校、学習院中等科・高等科を経て、早稲田大学鉱山科を卒業しました。当時の台湾の上流階級の子弟と同様に、日本語が堪能で、中国語や台湾語よりも日本語を日常的に使用していました。学習院時代の同期には、犬養康彦がいます。

戦後の帰国と再渡日

第二次世界大戦後の1947年、顔恵民は兄弟と共に台湾へ帰国しましたが、二・二八事件などの本省人弾圧を逃れるため、1949年に密航して再び日本へ戻りました。この時期の台湾は、政治的な混乱が続いており、多くの台湾人が不安定な状況に置かれていました。顔恵民は、日本で貿易業などに従事し、経済的な基盤を築きました。

実業家としての活躍

1978年から1984年まで、顔恵民は家業である台陽公司の代表を務めました。台陽公司は、鉱業、運輸、交通、鋳造品製造、投資など多岐にわたる事業を展開していました。彼は、台陽公司の経営に携わり、家業の発展に貢献しました。

死去

1985年、顔恵民は肺がんによりこの世を去りました。享年56歳でした。

私生活

顔恵民は、戦前から戦後にかけて日本に滞在していた際に、石川県鳥屋町一青地区出身の日本人女性と出会い、結婚しました。その妻との間に、一青妙と一青窈の二人の娘をもうけました。一青窈の楽曲には、『大家』や『ぱぱへ』など、父への想いを歌ったものが複数あります。また、顔恵民は登山を趣味としていました。

家系

顔家の歴史は長く、顔恵民の祖父である顔雲年（1874-1923）は、顔尋芳の長男として生まれ、瑞芳鉱山の採掘請負いに始まり、その後、炭鉱経営に乗り出し、台湾の鉱業界で大きな影響力を持つようになりました。顔雲年は、三井家や藤田組と共同で事業を行い、基隆炭鉱社や台北炭鉱社を設立しました。また、1920年には台陽鉱業を設立し、金鉱と炭鉱事業を拡大しました。

顔恵民の父、顔欽賢（1902-1983）は、旧制高崎中学校、立命館大学経済科を卒業後、1937年に台陽鉱業の社長に就任しました。戦後、二・二八事件で逮捕されるも釈放され、台陽鉱業の再建に尽力しました。

顔恵民の弟である顔恵忠は、恵民の引退後、1984年に台陽公司の代表に就任しました。

顔恵民の関連文献

一青妙の著書『私の箱子』には、父である顔恵民や家族についてのエッセイが綴られています。この書籍は、顔恵民の人生や家族の歴史を知る上で貴重な資料となっています。

まとめ

顔恵民は、台湾の財閥家に生まれ、激動の時代を生き抜いた実業家でした。彼は、日本の教育を受け、貿易業を経て家業を継ぎ、その人生は、台湾と日本の両方の文化が交錯する中で形作られました。娘である一青妙と一青窈を通して、その生涯の一部は広く知られています。

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