顕示比較優位

顕示比較優位 (Revealed Comparative Advantage)

顕示比較優位（けんじひかくゆうい、英: Revealed Comparative Advantage）とは、国際貿易を通じて各国の産業の競争力を評価するための指標です。この指標は、デヴィッド・リカードが提唱した比較優位の原理に基づいています。短縮形のRCAとしても知られており、この概念は1965年にベラ・バラッサが初めて提唱したため、バラッサ指数とも呼ばれます。

概要

顕示比較優位は、特定の国の産業が国際貿易でどれだけの優位を持っているかを数値で表現します。この指標は次のように定義されます：

• - RCA (Revealed Comparative Advantage)は、以下のような計算式を用います。

$$
RCA_{ci} = \frac{E_{ci} / \sum_{k=1}^{I} E_{ck}}{\sum_{d=1}^{C} E_{di} / \sum_{k=1}^{I}\sum_{d=1}^{C} E_{dk}}}
$$

ここで、$E_{ci}$は国$c$の産業$i$からの輸出額を示し、$I$は産業の全体数、$C$は国の数を表します。顕示比較優位は、特定の国の輸出がその国全体の輸出に対してどの程度の割合を占めているかを示し、他国と比較することでその相対的な競争力を評価します。

RCAの値が1より大きい（$RCA_{ci} > 1$）場合、その国はその産業において比較優位を持っていると考えられます。逆に、1未満（$RCA_{ci} < 1$）であれば、比較優位がないという解釈がされます。経済分析の観点から、貿易における輸出のデータをもとにした有効な指標です。

例

例えば、2010年のデータでは、大豆の全世界における輸出額が420億ドルで、これは世界全体の輸出の0.35%を占めています。ブラジルの総輸出額は1400億ドルで、その中の大豆の輸出は約110億ドルでした。これにより、ブラジルの大豆輸出のシェアは7.9%でした。この場合、7.9を0.35で割ると22となり、ブラジルは世界の平均に比べて大豆の輸出で22倍のシェアを持っていると示されます。したがって、ブラジルは大豆に関して比較優位があるという結論が導き出されます。

応用例

顕示比較優位は、様々な国や期間で異なった産業における分析に使用されています。例えば、ベラ・バラッサとマーカス・ノーランドの研究では、1967-1983年における日本とアメリカの20の産業を対象にこの指標が計算され、日本が徐々に非熟練労働に依存する産業から、人的資本集約的な産業へ比較優位をシフトさせていることであったり、アメリカでは資源に基づく産業の優位性が強化されていることを示しています。

また、欧州連合（EU）に対するトルコの輸出データにこの指標が適用された研究や、NAFTAに伴うメキシコからアメリカへの輸出の増加がアメリカの労働市場に与えた影響を解析した論文など、幅広い用途があります。さらに、カナダ国内の貿易利益を推計する研究では、各州の顕示比較優位のパターンが調査されています。国際機関である世界銀行も、WITSデータベースを通じて各国の顕示比較優位に関するデータを公開しています。

課題

ただし、バラッサの顕示比較優位には、国や産業の特性を考慮しないという限界があります。このため、最近では、輸出国-輸入国-品目に基づくパネルデータ分析を用い、貿易額を自然対数で表現し、固定効果モデルを用いてRCAを推定するという新たなアプローチが提案されています。また、標準化顕示比較優位（normalized revealed comparative advantage）という新しい指標も提案され、様々な財や国、そして時間を通じての比較が可能です。

このように、顕示比較優位は国際貿易の理解を深めるための重要な指標として、多くの研究や実務で利用されています。

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