類は友を呼ぶ (ゴヤ)

『類は友を呼ぶ』

『類は友を呼ぶ』は、フランシスコ・デ・ゴヤが1797年から1799年にかけて制作した銅版画であり、版画集《ロス・カプリーチョス》の中の一作品です。この作品は、売春婦に対する風刺を含むもので、当時の社会状況を反映しています。

作品の概要

本作の中心に描かれているのは、マドリードの通りで求愛を受ける若い女性、マハです。マハはマンティーリャで顔を隠し、左手には扇子を持ち、その手には指輪が光ります。彼女は深いネックラインの衣服を着ており、この出で立ちからは当時の社交シーンにおける女性の役割と求愛行為が表現されています。彼女の周囲には、老女たちがロザリオを手にしながら談笑し、男女の様子を見守っています。

18世紀のスペインにおいて、屋外での社交活動は重要な文化となっていました。特にマドリードのプラド通りは新しい出会いの場であり、ゴヤはこの場面を描くことで、求愛の形態や社会の風習に対して批判的な視点を持っています。表面的には上流階級の求愛の風俗画のように見えますが、マハの肌の露出や扇子を持つ手の動きには、売春への欲望が感じられます。その足先の向きもまた、当時の人々が下品と見なしていた売春婦の身振りを彷彿とさせます。

働きかける老女たち

背後の老女たちは、売春婦と客を仲介する役割を担っていると考えられます。彼女たちが手にしているロザリオは、もしかすると、小説『カリストとメリベーアの悲喜劇』に登場する遣り手婆を思わせるものです。彼女たちは客が金を持っていないことを知り、そのことを面白がって話していることが示唆されています。

ゴヤは照明を巧みに使用し、視聴者の目を最も重要な部分に誘導します。この手法は、作品全体の中で特に顕著であり、老女の悪意に満ちた笑みや、マハの表情、さらには彼女を見つめる男性の顔を際立たせています。

隠れたメッセージ

この作品は、ゴヤ自身の人生にも影響を与えたとされる人物との関係を反映しているとの解釈もありますが、より広く「売春」というテーマを提示しているとも言えるでしょう。手稿によれば、当時の社会における男女の道徳観についても言及されており、男女が持つ悪徳は教育によるものであるという見解が示されています。これにより、作品のタイトル「類は友を呼ぶ」は、人々が見せる悪徳や不道徳が互いに引き寄せ合うことを意味していると言えます。

この作品の異なる解釈は、文化的な文脈における男女の役割や、社会における品位についての考察を促します。ゴヤはこの作品を通じて、視覚的な要素や社会の風潮を巧みに組み合わせて批判的なメッセージを訴えています。

まとめ

『類は友を呼ぶ』は、単なる風俗画ではなく、スペイン社会の複雑な状況を洞察する作品であり、ゴヤの鋭い観察力と風刺的な才能が表れています。美術史の中でも重要な位置を占める本作は、人間関係の暗い側面を浮き彫りにし、観る者に深い思索を促します。

作品は現在、ワシントンD.C.のナショナル・ギャラリー・オブ・アートに所蔵されており、そのユニークな視点は多くの人々に影響を与え続けています。

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