類別トリック集成

『類別トリック集成』について

『類別トリック集成』（るいべつトリックしゅうせい）は、著名な推理作家・評論家である江戸川乱歩が書いた評論であり、1953年の『宝石』に初めて掲載され、その後『続・幻影城』に収められました。この作品は、古今東西の推理小説に登場するトリックを広範囲にわたって分類し、解説を加えたものです。乱歩はジョン・ディクスン・カーの小説『三つの棺』の第17章「密室の講義」に触発され、871のトリックの例を挙げています。

トリックの分類

乱歩のトリックは大きく九つのカテゴリーに分けられ、それぞれに詳細な解説とともに数多くの例が記されています。以下では主な分類について簡単に紹介します。

1. 犯人や被害者に関連するトリック（226例）
ここでは、一人二役や意外な犯人、自己抹殺など、さまざまな人間に関するトリックが取り上げられています。

2. 犯人の痕跡に関するトリック（106例）
密室トリックや足跡、指紋トリックなど、現場に残された痕跡を基にしたトリックが解説されています。

3. 犯行の時間に関するトリック（39例）
時間の操作を用いたトリックが記載されています。例えば、乗り物や時計による時間の誤認が挙げられます。

4. 凶器や毒物に関するトリック（96例）
異様な殺害手法や様々な毒物が用いられた犯罪例が検討されています。

5. 隠し方に関するトリック（141例）
死体や物品の隠し方を中心としたトリックが多く含まれ、印象深い例がたくさんあります。

6. その他のトリック（93例）
錯視や特殊な犯罪方法に関するトリックが含まれ、独創的な内容が特徴です。

7. 暗号記法の種類（37例）
推理小説で使われるさまざまな暗号の手法が解説されています。

8. 異常な動機（39例）
犯罪の背後にある動機を探ることで、感情や心理の複雑さが浮き彫りにされます。

9. 犯罪発覚の手掛かり（45例）
物質的かつ心理的な手がかりの面白さを示すトリックが取り上げられています。

乱歩の視点

江戸川乱歩は、自身が愛読していた本の影響を受け、トリックの面白さを伝えようとしました。彼は序文でこの『類別トリック集成』が『続・幻影城』の中心部分であると述べています。また、各トリックの中には特筆すべき例に詳細な解説が付されており、読者にさらなる興味を持たせる要素も多く見られます。

乱歩のトリック分類は、その後の推理小説執筆において多くの作家に影響を与え、佐野洋は自身の作品執筆以前からこの評論を愛読していたことを語っています。

『類別トリック集成』は、日本の推理文学の深さと豊かさを再認識させる一冊であり、今もなお多くの読者に愛されています。この評論を通して、江戸川乱歩の独特な視点と高度な思考が浮かび上がるでしょう。

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