風の住処

『風の住処 -銀河標準時-』：遠い未来の宇宙を舞台にしたSF物語

『風の住処 -銀河標準時-』は、山下いくと氏によって描かれたSF漫画作品です。メディアワークス社の『コミック電撃大王』で連載され、全11話と番外編「ナイフエッジ」が掲載されました。連載期間は3年間で、電撃大王の創刊号から12号まで掲載されましたが、残念ながら未単行本化となっています。

2008年には、仮想現実を主題とした先駆的な作品として、大阪大学・バーチャルリアリティ研究学会誌に山下氏自身によって紹介され、注目を集めました。その斬新な設定と魅力的なキャラクターたちが、多くの読者の心をつかんだ作品と言えるでしょう。

物語の舞台と概要

物語は、遠い未来の宇宙、とある恒星系の一惑星を舞台としています。宇宙を旅する半女性型機械人形、ライプニッツは、砂漠を彷徨う少女エニョンと出会います。この出会いをきっかけに、壮大な物語が幕を開けます。エニョンは感情の起伏が激しい少女で、ライプニッツとの出会いを通して、自身の存在や世界の謎に直面することになります。

魅力的な登場人物たち

作品には個性豊かな登場人物たちが登場します。

エニョン: 物語の中心となる少女。感情の起伏が激しく、その揺れる心境が物語に深みを与えています。
ライプニッツ: 半女性型機械人形。LERAシリーズ4番目の機体であり、長きに渡り宇宙を旅してきた過去を持っています。物語における視点人物の一人。4本の手を持つ姿でエニョンの星にたどり着きます。
ホワイティ: 1枚翼のライプニッツ。サーフボード状の飛行翼を持ち、何者かの支配下に置かれ、AMアマランスを破壊しようとしています。
カーマイン: 6枚翼のライプニッツ。常に微笑みを絶やさず、AMアマランスを案内する存在です。飛行能力を持ち、情報収集を趣味としています。
ラピスラズリ: ライプニッツが生まれた当時を指定して名付けられた個体名。
ユミ・エルマとその関連データ: ライプニッツと出会い、AMアマランスに幾度となく訪れる女性。彼女の様々な年齢におけるAMアマランス訪問時のデータ（ユミ・カンナ・エルマ、ユミ・キサラ・エルマ、ユミ・カグラ・エルマ）も重要な役割を果たします。
オビター: ライプニッツのサポートモジュール。
その他: エリノツカ・サラ、トリステア夫妻、ハサン、カフディ、テルヒコ、エリゼ、ジョン＝パトリクス、リスピア、ヒロ、ミナミ風祭、H・B=Gamuse、Author type010 「SQUIRREL」、A・S・A・S・H・W 「APPLE-II」 ARMED MAX、Dr.スミス、タクミ=エルマ、リベルター、なーう゛ん君、なおちゃん、らぱりーが、タツマキ娘など、多くのキャラクターが登場し物語を彩ります。

重要な舞台：AMアマランス

AMアマランスは、五角形の集合体をしたバーチャルシティです。宇宙世紀初期に作られ、火星上に存在していましたが、現在はライプニッツの内部に存在しています。街の住人たちは情報生命体として半永久的に生き続け、その存在意義が物語の重要なテーマとなっています。AMアマランスは「記憶の壺」や「花瓶」とも呼ばれ、その名前はギリシア神話に登場する枯れない花、アマラントスに由来しています。

その他の設定

ショートコード: AMアマランス内での瞬間移動を可能にするチケット。配給制であり、その理由も物語の中で明かされます。
プラ=スコ ～ PLUS DIVER SQUADRON: バーチャルゲームのキャラクター。

作品の魅力

『風の住処 -銀河標準時-』は、未単行本化であるにも関わらず、その独特の世界観と魅力的なキャラクター、そして仮想現実というテーマの先駆性から高い評価を得ている作品です。遠い未来の宇宙を舞台に、機械人形と少女の交流、バーチャルシティの謎、そして人間の感情や存在意義といった深遠なテーマが描かれています。読者の想像力を掻き立てる、忘れがたい作品と言えるでしょう。

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