風の歌を聴け (ORIGINAL LOVEのアルバム)

ORIGINAL LOVE|Original_Love『風の歌を聴け』

1994年 6月27日にリリースされたORIGINAL LOVE|Original_Loveの4枚目のオリジナルアルバム『風の歌を聴け』は、バンドにとって重要な転換期に制作された作品です。前作までのメンバーチェンジを経て、田島貴男を中心に、木原龍太郎、小松秀行、そして新たに佐野康夫が加わった新体制での最初のアルバムとなりました。

制作背景

田島貴男は、このアルバム制作に際し、過去の作品で実現してきたポップスとしてのクオリティと、売れるという側面の両立を意識し、大きなプレッシャーを感じたと語っています。しかし、そのプレッシャーがあったからこそ、短期間での制作が、作品全体を貫く勢いにつながったとも言えるでしょう。1ヶ月の楽曲制作期間、そして1ヶ月のレコーディング期間という短期間で、非常に密度の高い作品が生み出されました。

サウンドとグルーヴ

田島は、このアルバムのサウンドプロダクションとグルーヴに自信を持っており、「全員日本人のメンバーで、こういう太いグルーヴが出せてすごく嬉しかった」と述べています。特に、佐野康夫と小松秀行の加入は、田島にとって大きな刺激となり、新しいアルバムのアイデアが次々と湧き上がったとのことです。

アルバムのテーマ

アルバム全体を通して、「生」と「死」といった対照的なテーマが散りばめられています。例えば、収録曲「The Rover」では生きている最中を歌い、「フィエスタ」では死をテーマにしながらも、生きることへの肯定へと繋がっています。また、「心 ANGEL HEART」では誕生をテーマにするなど、それぞれの楽曲が独立したテーマを持ちながらも、アルバム全体として一つの大きな流れを形成しています。

アートワーク

初回盤はスリーブ仕様で、外装ケースが帯のようなデザインになっています。これは、デザイナーの信藤三雄が、捨てられるダストカバーというコンセプトでデザインしたものです。また、アルバムタイトルである「風の歌を聴け」という日本語タイトルの処理にも苦心し、最終的にボケた写真を使用したデザインが採用されました。バンドメンバーの写真はシカゴで撮影され、この際に「The Rover」「It's a Wonderful World」「朝日のあたる道」のプロモーションビデオも制作されました。

収録曲について

The Rover: 前年のライブで演奏された「愛のサーキット」のアレンジを基に制作されました。田島はこの曲で、ソウルのリズムアレンジを理解できたと語っています。
It's a Wonderful World: カーティス・メイフィールドにインスパイアされた曲で、田島は初めてファルセットで歌っています。生命の祝福をテーマにしつつ、現実の厳しさも描かれています。
The Best Day of My Life: ブラジル音楽の影響を感じさせる楽曲で、自然な流れでアレンジが生まれたと田島は語っています。
二つの手のように: 木原龍太郎との共作で、日本のポップスを意識して制作されたと述べています。
フィエスタ: セカンドラインのリズムを取り入れた楽曲で、慰安や霊的なものとは異なる、タフでシンプルな賛美歌のようなイメージで作られました。田島自身のために作った曲だと語っています。
心 ANGEL HEART: 誕生をテーマにした楽曲で、シングルとは別ミックスで収録されています。
時差を駆ける想い: 田島と小松秀行の共作曲で、子供の頃の思い出やモロッコ旅行での経験が歌詞に反映されています。
Two Vibrations: ギター、ベース、ドラム、クラビネットをほぼ一発録りで制作されました。クラビネットの実機を使用した初の楽曲です。
Sleepin' Beauty: 木原龍太郎が曲を持ち込み、田島との共作で完成。AORを意識して制作され、ソウルフルなボーカルが特徴です。
朝日のあたる道 AS TIME GOES BY: 先行シングルとしてもリリースされた楽曲で、アルバムの最後を飾るにふさわしいバラードです。素直な気持ちで作られ、切ないメロディーが特徴です。

Standard of 90'sシリーズ

2007年には、『standard of 90's』シリーズの一つとして、田島貴男監修・公認盤としてリマスター再発されました。ボーナストラックとして、田島貴男自身によるリミックス版も収録されています。また、2013年にはSHM-CDフォーマットでも再発されました。

『風の歌を聴け』は、ORIGINAL LOVE|Original_Loveの音楽的な進化と、バンドの新たなグルーヴを体感できる重要な作品です。メンバーチェンジという大きな転換期を乗り越え、新たなスタートを切ったバンドの勢いが感じられる一枚です。

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