風疹ウイルス

風疹ウイルス：感染と予防

風疹は、風疹ウイルスによって引き起こされる感染症です。このウイルスは、ヒトにのみ感染することが知られています。風疹ウイルスは、RNAウイルスの一種であり、マトナウイルス科ルビウイルス属に属します。かつてはトガウイルス科に分類されていましたが、近年の分類体系の見直しにより、マトナウイルス科へと変更されています。

ウイルスの構造とゲノム

風疹ウイルスは、直径60～70nmほどの球状の粒子で、正二十面体カプシドにエンベロープが覆われています。このエンベロープには、赤血球を凝集させる性質があります。カプシド内部には、ウイルスゲノムとなる一本鎖プラス鎖RNAが含まれています。このRNAは、感染細胞内で直接mRNAとして機能し、ウイルスタンパク質の合成を指示します。E1遺伝子は、風疹ウイルスの検出に用いられる重要な遺伝子です。

感染と症状

風疹ウイルスは、主に飛沫感染によってヒトからヒトへと伝播します。感染経路は上気道です。感染すると、多くの場合、軽微な症状（発熱、発疹、リンパ節腫脹など）を示しますが、無症状の場合もあります。しかし、妊娠初期の感染は深刻な問題を引き起こします。風疹ウイルスは胎盤を通過し、胎児に感染して先天性風疹症候群（CRS）を引き起こす可能性があります。CRSは、難聴、心臓疾患、白内障などの様々な先天異常を引き起こす可能性があり、重篤なケースでは死産や流産につながることもあります。

TORCH感染症

風疹ウイルスは、TORCH感染症の1つとして分類されています。TORCHは、妊娠中に胎児に先天異常を引き起こす可能性のある感染症の頭文字をとったものです（Toxoplasma、Other、Rubella、Cytomegalovirus、Herpes）。風疹ウイルスは、このTORCH病原体の「R」にあたります。

風疹ワクチン

風疹ウイルス感染症を予防するために、効果的なワクチンが開発されています。弱毒生ワクチンが広く使用されており、小児期に接種することで、集団免疫を獲得し、風疹の流行を防ぐことができます。ただし、妊娠中の女性への接種は禁忌です。妊娠を希望する女性は、妊娠前にワクチンを接種しておくことが推奨されています。

ワクチンの安全性と有効性

風疹ワクチンは、一般的に安全性の高いワクチンとされていますが、免疫不全状態の人、妊娠中の人、急性疾患にかかっている人など、接種できない場合があります。また、ワクチン接種後にも、発熱、発疹などの副作用が起こる可能性があります。ワクチンは、5℃以下の冷蔵状態で、直射日光を避けて保管する必要があります。

風疹の予防

風疹の予防には、ワクチンの接種が最も効果的です。特に、妊娠を希望する女性や、妊娠の可能性のある女性は、妊娠前にワクチン接種を済ませておくことが大切です。また、妊娠中の女性は、風疹ウイルスに感染しないように注意する必要があります。風疹患者との接触を避け、不必要な外出を控えるなど、感染予防対策を心がけましょう。

まとめ

風疹ウイルスは、ヒトに感染するRNAウイルスであり、風疹を引き起こします。妊娠初期の感染は、胎児に深刻な影響を与えるため、妊娠を希望する女性は、妊娠前に風疹ワクチンを接種しておくことが強く推奨されます。風疹の予防には、ワクチン接種と感染予防対策が重要です。

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