風船 (映画)

映画『風船』解説

1956年2月19日に公開された映画『風船』は、大佛次郎の同名小説を原作とした人間ドラマです。監督は川島雄三が務め、脚本も川島自身と今村昌平が共同で執筆しました。物語は、かつて天才画家として名を馳せた村上春樹を中心に、彼の家族や周囲の人々の人間関係が複雑に絡み合いながら展開します。

あらすじ

主人公の村上春樹は、かつては天才画家として名を馳せていましたが、現在はカメラ会社の社長として、過去の栄光にしがみつくように生きています。妻の房子、息子の圭吉、娘の珠子という家族構成ですが、それぞれが問題を抱えています。圭吉は会社の営業部長でありながら愛人を作り、珠子は軽い知的障碍を抱え、家族は崩壊寸前です。

物語は、春樹の師匠の息子である都築正隆や、正隆の元愛人であるシャンソン歌手の三木原ミキ子、圭吉の愛人である山名久美子など、個性豊かな登場人物たちが織りなす人間模様を描いていきます。春樹は過去の栄光と現在の不満の間で葛藤し、家族との関係もぎくしゃくしています。また、春樹の過去を知る京都の阿蘇るい子とその弟である達次郎の登場により、物語はさらに複雑さを増していきます。

主要キャスト

村上春樹（元天才画家・カメラ会社社長）：森雅之

過去の栄光に執着し、現在の生活に不満を抱える主人公。

村上房子（春樹の妻）：高野由美

夫との関係に悩みを抱えながらも、家族を支えようとする。

村上圭吉（春樹の息子・カメラ会社営業部長）：三橋達也

仕事で成功を収めているが、愛人関係に溺れる。

村上珠子（春樹の娘・学生・軽い知的障碍者）：芦川いづみ

家族の状況に翻弄されながらも、純粋な心を持ち続ける。

都築正隆（春樹の師匠の息子・銀座のナイトクラブのマネジャー）：二本柳寛

春樹の過去を知る人物の一人。

三木原ミキ子（正隆の元愛人・シャンソン歌手）：北原三枝

過去の恋愛に囚われている。

山名久美子（圭吉の愛人・銀座のバー「ミノトオル」の女給・未亡人）：新珠三千代

圭吉の愛人でありながら、複雑な心情を抱える。

阿蘇るい子（京都・西陣での春樹の8年前の下宿先の娘）：左幸子

春樹の過去の秘密を知るキーパーソン。

阿蘇達次郎（るい子の弟・学生）：牧真介

姉と共に春樹の過去に関わる。

スタッフ

監督: 川島雄三
製作: 山本武
原作: 大佛次郎
脚本: 川島雄三、今村昌平
撮影: 高村倉太郎
音楽: 黛敏郎
美術: 中村公彦
録音: 橋本文雄
照明: 大西美津男
衣装デザイン: 森英恵

特徴

この映画は、当時の社会状況や人間の欲望、家族のあり方を深く掘り下げて描いています。川島雄三監督の演出は、登場人物たちの心の機微を丁寧に捉え、観客に深い共感を呼び起こします。また、豪華なキャスト陣の演技も見どころの一つです。

黛敏郎による音楽が、作品全体の雰囲気を盛り上げ、物語に深みを与えています。さらに、森英恵が担当した衣装デザインは、当時の流行を反映しており、視覚的にも楽しめる要素となっています。

外部リンク

風船 - 日活

『風船』は、単なる家族ドラマに留まらず、人間の複雑な心理や社会の矛盾を描いた作品として、現在でも多くの人々に評価されています。社会風刺と人間ドラマが巧みに融合した、見ごたえのある一本です。

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