飛び出し坊や

飛び出し坊や：事故防止への願いを込めた看板

飛び出し坊やとは、子供たちが道路へ飛び出すことによる交通事故を防ぐため、ドライバーに注意を促す目的で、通学路などに設置されている看板のことです。

歴史

その起源は、交通戦争と呼ばれた昭和30年代に遡ります。当時、交通事故が多発する中で、ドライバーへの注意喚起を促す看板が各地で製作されるようになりました。その中で、子供が道路に飛び出す姿をモチーフにしたものが登場し、次第に普及していきました。

当初は、単に板に子供の絵を描いたものが多かったのですが、後に子供の形に板をくり抜いたものが主流となりました。現在では、東北地方から九州まで、日本各地で見かけることができます。特に近畿地方に多く、滋賀県はその設置数において日本一を誇ります。

飛び出し坊やは、1973年6月に滋賀県八日市市社会福祉協議会（現・東近江市社会福祉協議会）が、地元の看板製作会社「久田工芸」に依頼して製作されたのが始まりとされています。この時、男の子型と女の子型の11体が製作され、八日市市内に設置されました。みうらじゅんは、この時に製作されたものを「0系」と名付け、現在主流となっている飛び出し坊やの元祖であるとしています。

滋賀県では、飛び出し坊やへの関心の高まりとともに、「0系」を基にした様々なゆるキャラやグッズ、文房具などが作られています。

設置と管理

飛び出し坊やの製作・設置は、主に地元のPTAや町内会が行っています。飛び出し坊やは、道路占用物として扱われるため、民有地以外に設置する場合は道路管理者の許可が必要です。しかし、交通安全啓発を目的とするものであるため、無許可で設置されていても黙認されているケースが多いようです。

ただし、設置場所や設置方法によっては、通行の妨げになる場合もあります。実際に、2003年には兵庫県神戸市で、飛び出し坊やと乗用車の接触事故が発生し、飛び出し坊やを設置した小学校PTAが車の修理費用を負担した事例もあります。また、滋賀県近江八幡市では、地元の中学生が設置した飛び出し坊やが盗難に遭う事件も発生しています。

デザイン

飛び出し坊やのデザインは、ドライバーの目に留まりやすいように、鮮やかな色彩が用いられています。手作りのものと、ホームセンターなどで販売されている既製品があり、地域や年代によって様々なデザインが存在します。特に手作りのものは、細かなデザインの違いが楽しめます。

子供たちに人気の漫画やアニメのキャラクターが描かれることもありますが、著作権上の問題が生じる可能性もあります。また、地域の名産や特産品をモチーフにしたご当地デザインも存在し、交通事故防止だけでなく、地域活性化にも活用されています。

「坊や」や「小僧」という名称から、男の子のデザインが多いですが、女の子や高齢者のデザインもあります。アニメ『けいおん!』の舞台となった豊郷町には、同作のキャラクターをモデルにした飛び出し坊やが設置され、観光客の人気を集めています。

顔の部分に写真をはめ込んだユニークな飛び出し坊やも存在します。その多様性と面白さから、みうらじゅんなど飛び出し坊やの撮影を趣味とする人もおり、メディアで取り上げられることもあります。

2023年公開の映画『翔んで埼玉 〜琵琶湖より愛をこめて〜』では、滋賀県のアイテムとして登場し、東近江市の商工会では映画のキャラクターをモチーフにした飛び出し坊やを地域フェアで展示しています。

飛び出し坊やは、単なる交通安全の看板としてだけでなく、地域の個性や魅力を発信する役割も担っています。その存在は、子供たちの安全を守るとともに、地域の人々に親しまれ、愛されています。

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