飛び違い

飛び違いは、かつて大相撲においてマスコミで報道・記録されていた決まり手の一つです。しかし、現行の公式決まり手82手には含まれていません。この決まり手には、主に以下の2通りの解釈が存在し、混乱が見られます。

飛び違いの定義

1. 蹴りによる崩しと叩き落とし
立ち合い直後、または激しい突き合い・押し合いの中で、瞬時に相手の体勢を崩す技。
片方の足で相手の足首を内側から蹴り上げ、同時に相手の首付近を手の甲で叩き落とします。
読売大相撲はこの定義を採用しており、現在の公式決まり手では「蹴手繰り」に相当します。

2. 逃げながらの叩き
相手の攻撃に対し、左右どちらかへ飛びながら、背後を叩く技。
足で蹴る動作は伴わず、逃れるようにして相手を崩します。
現在の公式決まり手では「叩き込み」に相当します。

公式決まり手制定以前の記録

公式な決まり手が制定される以前には、「飛び違い」として報道・記録された取り組みが存在します。以下はその例です。

昭和16年5月場所7日目：佐渡ヶ嶌 対 大和錦
昭和16年5月場所8日目：櫻錦 対 双葉山
この取り組みは、前述の「蹴りによる崩しと叩き落とし」の定義に該当します。
『近世日本相撲史』では「蹴手繰り」として記録されており、資料によって決まり手の解釈が異なる事例の一つです。
昭和16年5月場所12日目：佐渡ヶ嶌 対 八方山
昭和17年1月場所8日目：藤ノ里 対 磐石
* 昭和17年5月場所3日目：櫻錦 対 玉ノ海

このように、飛び違いは時代や資料によって解釈が異なり、現在では公式な決まり手としては認められていません。しかし、相撲の歴史を語る上で興味深い決まり手の一つと言えるでしょう。

もう一度検索